人と合奏できるAIがカンヌ広告賞受賞 ヤマハ、伝説的ピアニストの演奏再現

ヤマハ株式会社による自動演奏プロジェクト「Dear Glenn」は、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル(Cannes Lions International Festival of Creativity)で「エンターテインメントライオンズ・フォー・ミュージック(Entertainment Lions For Music)」部門の「シルバー」を受賞した。

故グレン・グールドは20世紀を代表する伝説的なピアニストであったと同時に不世出の作曲家でもあった。モーツァルトやベートーヴェン、バッハの楽曲への独創的で大胆な演奏解釈・表現は、没後40年が経とうとしている今なお世界中の人々を魅了し続けている。  

そして今、グレン・グールドの演奏をAIで再現しようとする試みがヤマハ株式会社によって立ち上げられた「Dear Glenn」だ。グレン・グールド・ファウンデーションの全面協力のもと、100時間以上の彼の演奏データを用いて深層学習を行った。また本人の演奏データのみならず、彼の演奏手法を熟知したピアニスト数名による「ヒューマン・インプット」も同様に学習に用い、高いクオリティでグレン・グールドの演奏を再現することに成功した。これにより、グレン・グールドが未演奏の楽曲に関しても、楽譜データさえあれば彼のテンポやタッチを瞬時に再現することができる。

グレン・グールドは独創的な演奏で知られたほか、聴衆と演奏者の間の新しい関係性について模索していた。演奏の一回性や限られた人しか演奏を聴くことができない状況に疑念を覚え、コンサート活動を30代で引退すると、以後レコード録音や放送媒体のための演奏に生涯を捧げる。当時新しいテクノロジーである電子メディアに着目し、音楽の在り方に革新的な可能性を見出した彼の業績に着想を得てDear Glennは始まった。共通するのは「音楽における人とテクノロジーの共生」だ。Dear Glennでは単に演奏を行うのみならず人間との合奏も可能である。共演者の演奏データをリアルタイムで解析し、共演者のテンポ・表現と協調する形でより調和的な演奏を行うことができるという。

偉大なる故人が生涯をもって模索したテクノロジーと音楽の在り方をなぞるように、ヤマハ株式会社はこれからも研究開発を続けていくだろう。

・ヤマハ株式会社について
本社所在地:静岡県浜松市 代表:中島卓也氏 1897年に日本楽器製造株式会社として発足し、楽器製造の過程で培った高い技術力をもとに、自動車部品事業に進出、戦時中の軍需により瞬く間に大企業へと成長した。現在では半導体やオーディオ機器なども含むAV・IT事業、リゾート地運営などを担うレクリエーション事業、音楽出版関連のエンターテイメント事業、スポーツ関連事業などに至るまで広範な分野に事業を展開し、経営の多角化に成功している。

・グレン・グールドについて
1932年、音楽家の両親の元トロントに生まれる。トロント王立音楽院を最年少かつ最優秀で卒業するなど幼少期から非凡な才を遺憾なく発揮した。20代にして世界中で公演を行うとその演奏力と独創的な楽曲解釈でセンセーションを巻き起こした。また10年のコンサート活動ののちコンサートから引退し、以後は電子メディアを活用した音楽家と聴衆の対等な関係の成立を志向する。特注の座面が極めて低い椅子でかがみこむようにして極端な猫背で演奏し、演奏中は鼻歌を決してやめないなど、その独特の演奏スタイルも広く知られた。50歳にて脳卒中で死没

リリースはこちら