米ニューヨーク市、AIに関する戦略的計画『The New York City Artificial Intelligence Strategy』を発表

NY市、AIに関する戦略的計画を発表

2021年10月13日、アメリカのニューヨーク市が人工知能に関する戦略的計画『The New York City Artificial Intelligence Strategy』を発表しました。 この計画は、ニューヨーク市が都市全体でAIを活用し、その結果もたらされる恩恵をコミュニティ全体に還元しようという試みです。

大量のビッグデータを解析し学習する”機械学習”、そしてその中の”ディープラーニング”が注目され加速した第三次AIブームですが、現在ではますますAIに対する需要が高まり、私たちの生活にも実際に活用されてきています。このような現代社会において一国の都市全体がAIに取り組もうとする戦略を発表したことは自然な流れなのかもしれません。

計画の内容

『The New York City Artificial Intelligence Strategy』 はニューヨーク市が他の都市に比べてはるかに進んでいることを示しました。計画書には、AIの仕組みに関する非専門家向けの解説や、ニューヨーク市で既に活用されているAIの事例、そして今後AIをどのように活用していくのかといった計画などが記載されています。

ニューヨーク市における現在の活用事例としては、サイバーセキュリティ業務へのAI導入や、市全体のエネルギー消費量を管理する行政機関におけるAI活用などが紹介されています。

そして今後の展望については、ニューヨーク市の最高技術責任者(CTO)であるジョン・ポール・ファーマー氏が、以下の5つの主要なセクションにまとめています。

⑴ ニューヨーク市のデータインフラの整備について
⑵ AIの活用により最小のコストで最大の利益を生み出すことができる分野について
⑶ より良いサービスを市民に提供するためにコミュニティ内でどのようにAIを活用すべきかについて
⑷ 研究機関や学会などの外部AIパートナーシップの重要性について
⑸ 市民のデジタル権利を確実かつ公平に保護することの重要性について

一方で、AIが悪用された場合にはどうなってしまうのかという懸念についても記述されています。人間が倫理的に正しい導きをせずAI単体で行動した場合、既存の問題である人種差別や不公平といった問題を不用意に助長させてしまう可能性があります。こうした問題意識を踏まえ、この計画書の作成には、政府関係者のみならずニューヨークのビジネスコミュニティやスタートアップコミュニティ、そして大学研究者や人権活動家など、様々なステークホルダーが関わっています。それはニューヨーク市が、AI開発初期段階における人間の倫理的行動や指標がいかに重要であるかを認識しているからです。

「世界的なイノベーションの中心地であり、約900万人の人口を抱えるニューヨーク市は、この未来を形作る上で重要な役割を担っています」とファーマー氏は述べています。今回ニューヨーク市が発表した『The New York City Artificial Intelligence Strategy 』はAIを最大限に活用し、人々を守り、すべての人にとってより良い社会を構築するために必要な次世代のステップを示しています。

『The New York City Artificial Intelligence Strategy』 はこちら