Plenty

AIを活用して人間も地球も健康に―孫氏が出資したAgriTech企業

室内で野菜や果物を栽培することで、都市部に新鮮な作物を供給することが可能となる「インドア農業」が近年注目されていますが、それと同時に費用が多くかかることから多くの農業スタートアップが撤退しているという事実もあります。しかしながらその中でも、アメリカのベンチャー企業「Plenty」は、AIを活用したインドア農業によりソフトバンクをはじめ多くの企業から多額の資金を調達することに成功しています。

この記事では、Plentyがどのような事業を行っているのか、そしてソフトバンクの孫氏がなぜ出資したのかについて紹介します。是非ご覧になってください。

そもそもどういった企業なのか

そもそもPlentyとはどういった企業なのか、簡潔に説明させていただきます。

Plenty

◇2014年にアメリカのサンフランシスコにて設立された農業スタートアップ
◇独自の生育システム、センサー、AI技術を活用した植物工場を運営し効率的な作物の栽培を実現
◇2017年7月には、ソフトバンク・ビジョン・ファンド主導で2億ドルが投資されました
◇資金調達額は総額約526億円

次に、Plentyが行っている事業についてもう少し詳しく見てみましょう。

Plentyが提供する画期的なサービス

Plentyは、ビッグデータ機械学習によって従来より効率的な水耕栽培を実現することに成功しました。AI が植物工場を制御することによって、少ない水で美味しい野菜や果実を栽培することができます。Plentyの植物工場は「垂直農法」という独自の農業方法を採っており、土を使うことなく、屋内に無数に建てられた高さ6mのポールに備え付けられた栽培装置で少量の水を循環させ、野菜や果物を栽培しています。

AIを活用した、垂直農法」というのは今までにない画期的なサービスですよね。では、そのサービスがどれほど凄いものなのか3つに分けて説明します。

少ない水使用量と高い生産性

Plentyは、テクノロジーを活用した農法によって、従来、屋外の畑で必要とされる水のわずか5%しか使わずに作物を生産することを可能としています。さらにその圧倒的に少ない水使用量にも関わらず、従来の生産性の約350倍を実現しています。Plentyよる収穫量の増分は、その作物における過去300年間の収穫量の増分に匹敵するとされています。すなわち、既存の農法で300年かかった進歩を、AIを活用することによって1年で成し遂げたことになります。

インドア農業だからこその新鮮な作物

現代の農業は、その土地で生産されたものをその土地で消費するという「地産地消」よりも、冷蔵・冷凍技術や空輸が整備されたことから海外の安価な作物を取り寄せる形が主流となっています。実際に、多くのスーパーや食品売り場に並んでいる野菜や果物は数日かけて何千kmという長い距離を運ばれています。その一方、都市部でも栽培することのできるPlentyのインドア農業は、約80kmで消費地まで届けることができるため地産地消に近い形で消費者に新鮮な作物を提供することができます。さらに、輸送距離を短縮することは、新鮮な作物を届けるだけでなCo2削減や輸送費削減にも繋がります。

美味しい作物を栽培できる

屋内に栽培工場を建てることで天候や虫を気にする必要がなくなり、生産者は作物の耐性を気にすることなく味を良くすることに集中できます。特に、創業者であるバーナード氏が重視している味の向上戦略は、ビックデータと機械学習を活用することによって従来の水耕溶液の配合を改善していくことです。さらに栽培工場には赤外線センサーが張り巡らされており、AIが作物の育ち具合をモニタリングしながら光や温度、水の流れを調節しています。そうすることによって最適な味を自在に調整することができるのです。

以上3点が、他の企業には実現できないPlentyならではのサービスの紹介でした。
最後に、ソフトバンクの孫正義氏がなぜこの企業に出資しようと思ったのかについて分析したものを紹介します。

孫正義氏がPlentyに出資した理由

孫正義氏率いるソフトバンク・ビジョン・ファンドがPlentyに2億ドルという多額の出資を行いましたが、その最大の要因はAI活用にあると考えます。

PlentyがどのようにしてAIを活用しているのか、説明させていただきます。

まず、機械学習によって開発されたPlenty独自のAIは700種もの作物について、温度・湿度・光の周波数など30種類のパラメーターを調整することで、野菜や果物の風味や生産性を自在に調整することができます。AIによる効率化の結果、種植えから収穫までわずか1週間という効率を実現し、年に50回の収穫が可能となっています。こうした優れたAIの開発を可能とする要因はPlentyならではの開発環境にあります。Plentyの本社はシリコンバレーにありますが、AIを開発しているのはワイオミング州にある「AIトレーニングセンター」という実験施設です。

最も注目すべき点は、創業者のバーナード氏によると「植物学のことをよく知らないデータサイエンティストがAIを開発している」という部分です。植物学に詳しい人間がAIを学んだ上でAIを開発したり、逆も然りデータサイエンティストに植物学をしっかりと学ばせたりする手法は採用していないのです。その理由は、「既存の植物学にバイアスされたくない影響を受けたくないからだ」としています。Plentyは、AI開発と植物学とを敢えて分断することで既存の概念に囚われず結果的に農業分野で最大活用できるAIの開発を可能としているのです。

国際連合食糧農業機関(FAO)によると、2050年には91億人に膨れ上がる世界人口に食糧を供給するには、現在の食糧生産から70パーセント増やす必要があるとし、それに対して孫正義氏は、Plentyが「現在の食糧システムをつくりかえる」と確信していると語りました。このような画期的なAI開発環境と、AIと農業との相乗効果を最大限に引き出すPlentyを孫正義氏は評価し出資したのではないのでしょうか。

以上、Plentyに関する記事でした。

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