世界で広がり続ける“OYO”ブランド―孫正義氏が出資したユニコーン企業
当時19歳だった若者が創業したインドのベンチャー企業“OYO”―今や、提供客室ベースで110万室と圧倒的な勢いで世界第二位にまで昇りつめました。
ソフトバンク・ビジョン・ファンドが出資したことでさらに話題を呼び、2019年から日本でも事業展開しているOYOについてご紹介します。
そもそもどういった企業なのか
まず初めに、OYOの企業概要をご紹介します。
◇2012年に創業したインド発のベンチャー企業
◇主な事業内容はホテル・住居などの不動産運営やリース、フランチャイズ
◇ホテルの提供客数ベースでは110万室で、世界第二位
◇2015年にソフトバンク・ビジョン・ファンドをはじめとする複数の投資ファンドから、10億ドルの出資を受ける
◇2019年 「OYO LIFE」、「OYO Hotels」が日本に進出
◇2020年 「OYO LIFE」、「OYO Hotels」が「OYO Japan 合同会社」として統合
次は、OYOの事業内容を深掘りし、その優位性についてご紹介します。
OYO のイロハ
OYO設立の裏話
2012年創業と、若い会社ではありますが、実は創業者であるリテシュ・アガルワル氏も当時は若干19歳でした。
同氏は、インド国内を旅する中で宿泊施設の質が担保されていないことに気づき、旅行者が安心して利用できるためのオンラインサービスを思いついたのが創業のきっかけです。
OYOの斬新なビジネスモデル
OYOのビジネスは、不動産物件のサブリース業です。
OYOは物件を自ら所有する代わりに、物件のオーナーから不動産を借り、顧客に貸す(これを、リースという)というビジネスモデルをとっています。
斬新な点としては、借り上げた不動産にOYOブランドを与え、リニューアルするという点です。
OYOの一部費用負担のもと、マニュアルに沿って既存の客室をリニューアルします。
その際、リネンやアメニティなどについて基準が設けられ、備品や従業員サービスのなどの標準化も図られています。
日本に進出した「OYO LIFE」と「OYO Hotels」の統合
2020年7月、「OYO LIFE」と「OYO Hotels」が「OYO Japan 合同会社」として統合されました。
以下では、日本に進出してきた上記二つのサービス内容と、統合が行われた理由についてご説明します。
【OYO LIFE】
インドでサービスを展開していたOYOは2019年3月、OYO LIFEとして事業を展開しはじめました。
OYO LIFEは、敷金・礼金・仲介手数料が無料、契約手続は全てスマホで完結するという新たなサービスを展開しています。
事業開始直後には大きな反響があり、100室が事前予約を含めて稼働率114%となり、SNSでも「黒船がきた」「賃貸のAmazon」などと話題になりました。
そして「首都圏の地図上にOYOの物件を加速度的に増やす」ことを目標に掲げた結果として、2020年には700駅から平均徒歩7分の部屋を7,000室以上仕入れることに成功しました。
【OYO Hotels】
OYO LIFEの誕生とほぼ同時期となる2019年4月に、OYO Hotels and Homes、ソフトバンク株式会社、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの合弁会社としてOYO Hotels Japan合同会社を設立し、日本でホテル事業も開始しました。
OYO Hotelsでは、テクノロジーを駆使した価格設定と予約システムにより、宿泊施設と顧客のマッチングを最適化するサービスを提供しています。
これにより、ホテルのオーナーであるパートナーは、自身のホテルビジネスを変革して、ゲストに質の高いサービスを提供できるようになりました。
【OYO Japan合同会社】
2020年8月、OYO Hotels Japan と OYO LIFE の運営会社を合併しました。
それまで、不動産賃貸と宿泊の2つの事業をそれぞれ別の会社が運営し、事業基盤、チーム、サービスを分けていましたが、新体制を構築することによって以下の3つの変革をもたらそうとしています。
①総合的な「暮らしと旅」のプレイヤーとしてのプラットフォーム
OYO Japanは、1つのプラットフォーム上で総合的な不動産事業とホスピタリティ事業を展開します。
②OYO Japanとしてのブランディングとマーケティング
「One OYO Japan」としてのブランディングとマーケティングにより、市場における認知度獲得を図ります。
③テクノロジーの強化
1つの企業にテクノロジーに関するリソースを集中させ、ウェブサイトやアプリのアップデートを加速させることで、業界最高レベルのUI/UXを提供します。
不動産業界にもたらす“IT化”
OYO LIFEは、全てスマホ上で契約できるようになっていますが、これは今までの不動産業界では考えられなかった画期的なサービスです。
従来、不動産業界で電子化が進まなかった理由は、賃貸借契約が法律で厳しく規制されているからです。
宅地建物取引業法では、物件概要や契約条件などが記載されている「重要事項説明書」について、専門の資格を有した宅地建物取引士が対面で説明しなければならないと規定しており、これが電子化を阻む要因となっていました。
しかしながら、これはあくまで「仲介」の場合であり、物件の貸主が直接借主とやりとりする場合には、宅建業法の適用外となります。
そのため、物件の貸主と借主とをつなぐ仲介ではなく、自ら物件を借り、それを転貸するサブリース業を展開するOYOが、不動産業界に電子化をもたらすことができたのです。
孫正義氏がOYOに出資した理由
圧倒的な成長速度
創業からどのようにして圧倒的なスピードで事業展開してきたのかについてご説明します。
その要因の一つとして、バックキャスティング方式で戦略立案を行っていることが挙げられます。
バックキャスティング方式とは、目標を決め、そのために必要な戦略を立て、どれほど時間と資源をかけるかを計算する方式です。
その後、ひたすらABテストを重ねることで、何が良くて何が悪いかを実証し、スピード感を持って事業を進めることが可能となります。
そして、OYOの成長を支える最大の要因は、変化に対して柔軟な対応をすることに優れていることです。
時代の変化を受け入れ、顧客のニーズに対応し続ける姿勢を孫正義氏は評価したのだと思われます。
AI活用
次に、OYOがAIを活用することで、どのようなバリューを創出しているのかについてご説明します。
【契約にかかる大幅な時間の節約】
AIを活用することで、既存のホテルチェーンに比べ、約36倍の速さでフランチャイズを拡大しました。
その契約期間は最短で会議3回、長くても5回とまさに即断即決です。
なぜこれほどのスピードで客室を増やせるかというと、OYOが所有する全世界1,000万以上のビルデータベースを活用しているからです。
【客室価格の最適化】
AIを活用することで、1秒あたり730件の価格最適化を実施し、1日当たり5,000万件にも及ぶ価格調整を行っています。
また、リアルタイム予測の正確性は97%にまで達します。
【インテリアデザイン】
AI活用したデザインアルゴリズムを活用して最適な家具を選択しており、中には稼働率を過去3か月にわたって85%以上にしたホテルもあります。
このように、AIを最大限に活用し様々な価値を創出している点を孫正義氏は評価したのでしょう。
allAi.jp では、他にも様々な企業を紹介していますので、是非ご覧ください。