機械学習により生物の形質を左右する遺伝子の特定が可能に

植物には数千もの遺伝子が存在し、それらの一部を別の生物のDNAで置換することで、害虫耐性などの人間にとってより有益な形質を発現させることができます。この技術を遺伝子組み換えと呼びます。この技術の裏では、どの遺伝子がどの形質を司っているのかといった関係を特定する作業が必要となりますが、今回米ニューヨーク大学ゲノミクスセンターの研究者らによってこの部分に革新的な成果がもたらされました。

生物の遺伝子のうち大部分は生物の形質に関与せず、わずかな割合の遺伝子のみが生物の形質を左右しますが、この部分を特定する機械学習モデルの大幅な改善に伴い、より効率的に・高精度で遺伝子の特定を行うことができるようになると研究チームは発表しました。従来はこの遺伝子の特定に遺伝子の部分的な改変とその効果を確認するための多段階の実験を要していたことを考えると、これはゲノミクス分野における飛躍的な進歩といえるでしょう。

研究チームはこのモデルの構成にシロイヌナズナとトウモロコシの遺伝子データを用い、窒素反応性遺伝子を特定しました。窒素反応性遺伝子は植物が成長の際必要とする窒素の取り込み効率を司るため、この部分の改善により栽培の際の肥料使用料を削減することができます。肥料の過剰使用は経済的に農家を圧迫し、またサンゴの白化・藻類の異常発生をはじめとした環境問題を引き起こすため、窒素反応性遺伝子にアプローチすることでこれらの問題を一挙に解決できます。

この遺伝子解析手法は植物のみへの利用にとどまらず、今後マウスへの応用を行っていくことを研究チームは明らかにしました。今回の研究に引き続き機械学習が生物の複雑な遺伝子の依存関係を解明し、環境や医療など様々な分野の問題へアプローチしていくと考えられます。

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