企業・サービス概要
GM(ゼネラル・モーターズ)傘下の自動運転開発会社。同社はエンジニアで起業家のKyle Vogt氏らがカリフォルニア州サンフランシスコで2013年に設立した。カイル氏はマサチューセッツ工科大学在学時にDARPA主催のロボットカーレース「DARPA グランドチャレンジ」に参加し、フォード車をドライブバイワイヤー能力とセンサーで改造したチームを共同で率いるなど、すでに頭角を現していた。
創業当初は、自動ブレーキや車線維持などのオートパイロット機能を自動車に後付けするキットを開発していたが、無人運転の未来のビジョンを拡大するためGMと手を結び、完全自動運転車の開発に本腰を入れ始めた。2017年にはドライバー不要の完全自動運転車の量産モデルを発表した。GMの電気自動車「Chevrolet Bolt」ベースで、ステアリングホイールは付いているが、機能的には完全に無人でも走行できる。
市場
同社は、開発を進める自動運転EVの実用化の場としてライドシェアやタクシー市場に主眼を置いている。2018年10月には、GMとCruiseとの自動運転開発にホンダが加わることが発表された。ホンダはCruise向けの無人ライドシェアサービス専用車の共同開発を行い、無人ライドシェアサービス事業のグローバル展開の可能性も視野に入れた。さらにCruiseへ7億5000万ドル(約850億円)出資するほか、今後12年に渡る事業資金約20億ドル(約2240億円)を支出する予定だという。しかしながら一方で、新型コロナウイルス渦中のコストを削減しようと、1800人超いる従業員の8%近くを解雇した。
自動運転技術
開発の加速化
Chevrolet BoltにVelodyne LiDARというセンサーを複数搭載した自動運転試験車両を作製。そして2016年5月にサンフランシスコで、2016年8月にはアリゾナ州スコッツデールやフェニックスでChevrolet Bolt EVの試験車両を使用した走行試験を開始した。買収後にはミシガン州の公道でも走行試験を開始している。
自前のソフトウェアをGMのEV「Chevrolet Bolt」と統合させたり、ドライバー不要のロボタクシーサービスを導入することを目的としてLyftの配車システムと統合させたりするなど、GMの自動運転車戦略の全面的な実現に取り組んでいる。2017年6月には130台の量産に成功し、9月には世界初の量産可能な自動運転車として、Chevrolet Bolt EVベースの車両が披露された。さらにサンフランシスコに新設する研究施設の建設費としてGMが1400万ドル(約15億4000万円)を投資することを発表。Cruiseは5年間でエンジニアら1100人以上を新規雇用することとし、開発を加速化している。
他社との差異
Chevrolet Boltを用いたドライバー不要の完全自動運転車の量産モデルを発表したほか、ステアリングホイールやアクセル・ブレーキなどのペダルといった手動操作用のスイッチ類を備えない自動運転レベル4(高度運転自動化)相当の無人自動運転車「Cruise AV」を発表。センサーとしてLiDAR5個、ミリ波レーダー21個、カメラ16個を搭載している。事業参入に備え、サンフランシスコの湾岸沿いの駐車施設に18基の急速充電器を設置したほか、独自の配車アプリ・車両管理システム「クルーズ・エニウエア」の試験を行っている。また、自動運転試験車両の許認可を出すカリフォルニア州車両管理局(DMV)への登録台数において、2018年9月時点で同社の自動運転車両が175台で最多となっている。2位のグーグル系ウェイモが88台ということからも、頭一つ抜きんでた存在といえる。
SVFの投資について
2018年、ソフトバンクグループのSoftbank Vision Fund(以下SVF)は総額22億5000万ドル(約2400億円)をCruiseに出資した。これによりSVFはCruiseの株式の19.6%を獲得した。同年、GMはCruiseの上場を検討していることがわかった。これが実現すればSVFは巨額の利益を獲得することになる。さらにSVFは自ら出資した米Uberや中国の滴滴出行、インドのOla、シンガポールのGrabなどとの連携を模索しており、ここから得られる利益も莫大なものとなりそうだ。
AIに関する特徴
・センサーからペタバイト規模のデータを毎日収集
・AIがオブジェクトを高精度で検出し、他の道路の利用者の行動を正確に予測
・主な技術:障害物のデータの視覚化、2D/3Dでのシミュレーションテスト作成、セマンティックマッピングによるカードグラファー、車両のリアルタイム追跡