株式会社オルツ(al+)
株式会社オルツ(以下、オルツ)は2014年に設立されたAIスタートアップで、パーソナライズ化したAIデジタルクローン『P.A.I』の開発をはじめ、サブスク型AI議事録作成ソフト「AI GIJIROKU」や、AIチャットボットサービス「NeoRMR」等のサービスを提供しています。同社の累計資金調達額は27億を超えているなど、注目のAIスタートアップです。
事業内容
・パーソナル人工知能『P.A.I』の開発及び提供
・サブスクリプション型AI議事録作成ソフト『AI GIJIROKU』の開発及び提供
・AIチャットボットサービス『NeoRMR』の開発及び提供
代表取締役 米倉 千貴 氏
愛知大学中退。大学在学時から参画していた株式会社メディアドゥ(現在東証一部上場)では2001年に同社の取締役に就任。その後電子書籍の企画販売を手掛ける有限会社STAR BUGを設立したのち2006年に未来少年株式会社を設立し合併。2014年に未来少年の子会社としてウェアラブルを設立。同年11月、株式会社オルツを設立。
創業の経緯とミッション
創業の経緯
オルツの代表取締役である米倉氏はこれまで3社の起業を経験しており、特に3社目の会社を経営していた時の経験がオルツの創業に繋がっています。米倉氏はルーティン化してきた日々の面接応対において、社員に内緒でチャットボットを導入したところ、誰にも気づかれることなく成功したといい、その経験がAIへの興味を掻き立てるきっかけとなりました。
またその当時、会社を経営する中で組織をどのように保っていくかについて悩んでいたこともあり、より良い環境下で社員を働かせたいという思いから会社を売却することになりました。そして新しくAI関連の会社を設立するにあたって、個人の作業を代替してくれるようなAIクローン技術の研究成果が社会実装されていないことに着目し、オルツを創業するに至りました。
ミッション
オルツは『ラボーロからオペラへ』というミッションを掲げています。ラボーロは労働を、オペラは創造的でアーティスティックな営みのことを指しますが、同社が開発しているAIクローン技術『P.A.I』を皮切りに世界中の全ての人々が自身のAIクローンを持つことによって、人々が労働(ラボーロ)から解放され、創造的でアーティスティックな営み(オペラ)に没頭できる世界を目指しています。
AI活用について
この記事ではオルツが提供しているAIサービスの中でも特に注目度の高い3つのAIサービスについて紹介します。まずパーソナライズ化したデジタルクローンAIの『P.A.I』、次に会議の自動文字起こしツールである『AI GIJIROKU』、そして最後に独自のアルゴリズムによる高速学習可能なAIチャットボットサービス『NeoRMR』です。それぞれどのようなサービスであるかについて説明していきます。
デジタルAIクローン『P.A.I』
『P.A.I』はPersonal Artificial Intelligenceの略称で、個人ごとに設けられたデジタル上のAIクローンのことを指します。この技術は個人の意思をデジタル化し、24時間365日休むことなく個人が行うあらゆるデジタル作業を代替してくれます。例えばオンラインショッピングや旅行の手配、その他仕事上で生じる単純作業などがそれにあたりますが、そうした面倒な作業を『P.A.I』が代替してくれることで人々はより創造的な活動に専念することができるのです。
現在は、自然な会話のやり取りができるような言語処理技術や本人の声に寄せるための音声合成技術、そして表情をより自然に作り出す技術等の研究開発を進めており、より人間に近づけたデジタルAIクローンの実現を目指しています。
文字起こしツール『AI GIJIROKU』
『AI GIJIROKU』は、会議等の議事録をリアルタイムにテキスト化するサービスです。従来は録音音声の書き起こしや手書きメモを手入力することが基本でしたが、このサービスを利用することで会議の終わりと同時に文字起こしが完了している状態を実現することができ、より生産的な仕事に注力することができます。
同製品の特徴としては大きく分けて3つあげられます。まず国内唯一のZoom連携サービスとなっている点、次に音声認識制度が99.8%である点、そしてリアルタイム翻訳が30か国語に対応している点です。また2022年3月28日時点で導入企業数は4,000社を突破するなど、企業のDX化を推進するツールの手助けとなっています。
チャットボットサービス『NeoRMR』
『NeoRMR』は、オペレーター業務を支援するAIチャットボットサービスです。従来のRPA(ロボットによる業務自動化)では、あらかじめ膨大な量の学習データを投入する必要があり、時間及び経済的コストが大量にかかっていました。それに対しNeoRMRは人間オペレーターの通常業務を継続的に学習し続ける設計となっているため、導入時の負荷を大幅に削減することができます。初期の学習に加え、継続的に人間オペレーターの業務を学習するため将来的にはオペレーター業務の完全自動化を実現することができます。
知財情報について
オルツはこれまで12件の特許出願をしており、そのうち7件の特許が登録されています。
事業内容から推察できるとおり、コンピュータ技術についての出願数が一定以上あります。
出願している特許の中には、リクルート社や三菱電機社、KDDI社などに引用されている特許もあり、他社からの注目度も見込めます。
特許番号:特許第6502965号
「コミュニケーション提供システム及びコミュニケーション提供方法」
https://search.tokkyo.ai/pat/PT_2016566534
どのような発明か:
SNSなどにおけるユーザーとの間で、利用者の個性・人格を適正に表現することのできる対話型自動コミュニケーションシステムです。
本発明によると、利用者が利用している様々なSNSからデータを取得し、データベースに蓄積することで、人工知能(AI)が利用者の思考を学習し、質問に対する適切な回答を提供するシステムを提供することができる。
この特許は国際出願もされていることから、他の特許と比べ、特許出願のコストが掛かっており、オルツにおいて重要な特許であることが伺えます。
国際出願番号: PCT/JP2015/086309
国際出願日: 2015-12-25
国際公開番号: WO2016/104736
国際公開日: 2016-06-30
今後の展開
ここまで説明してきたように、オルツはデジタルAIクローン『P.A.I』の開発をはじめ、議事録自動作成サービスやオペレーション業務を支援するチャットボットサービスなど、一貫して人間が行う作業を代替するようなサービスを展開しています。同社が掲げている『ラボーロからオペラへ』というミッションのように、オルツを皮切りにこのようなサービスがより普及していけば、真に人間を労働から解放し、より創造的な営みに注力できるような世界が実現するかもしれません。今後の動向に注目しましょう。