機械学習によって動物由来ウイルスの人への感染リスクを予測

感染リスクの事前予測は困難

近年、動物と接触する機会が増え、従来は稀であったり存在がほとんど知られていなかったような感染症が突如、新興感染症として大流行するケースがたびたび見られるようになりました。 こうした新興感染症の大半は、人間以外の動物に由来する『人畜共通感染症』ウイルスによって引き起こされます。しかし、新たにウイルスが発見されたと同時に人畜共通感染症のリスクを迅速に判定することは困難でした。

機械学習によって予測可能に

この問題に対する解決策として期待されるのが、英グラスゴー大学の研究成果です。英グラスゴー大学は、数多に存在する動物由来ウイルスの中から人に感染する可能性があるウイルスをゲノム配列のみに基づいて予測する機械学習モデルを開発したと発表しました。

同モデルでは、ウイルスのゲノム配列情報のみを解析し、人への感染リスクを『低・中・高・極めて高』の4つに分類します。このモデルは、過去の関連情報を用いることなく、新型コロナウイルスの人への感染リスクが『高』であると予測できたとのことです。もしこの機械学習モデルが新型コロナウイルスの発見前に開発されていれば、今回のパンデミックを事前に予測できたかもしれません。

将来の展望

従来、ウイルスの解析は研究室と実社会におけるウイルスの活動情報をもとに行われていたため、解析が行われるのはウイルスが実際に被害を出し始めてからというケースが大半でした。また、従来の手法では時間とコストがかかるため、解析が新規のウイルス発見ペースに追いついていないという問題もありました。

英グラスゴー大学が発表した手法は、低コストで膨大な数のウイルスを解析できるため、どのウイルスに対して注意を払う必要があるのかを測るトリアージとして機能することが期待されます。人への感染を直接防ぐことはできなくても、初期段階での感染封じ込めに寄与するでしょう。今回のパンデミックに触発されて始まった研究は、未来のパンデミックを防ぐ礎となるのかもしれません。

英グラスゴー大学の発表はこちら