昨今「人工知能」や「AI」という言葉を非常に多く耳にするようになりました。ところが、人工知能(以下、「AI」)がどのようなものなのか、実際に私たちの生活においてどのように関わっているのかをよく理解できていないという人も多いのではないでしょうか。そこで、本記事では、AI技術が使用されている身近な事例をご紹介します。
AIアシスタント
AIアシスタントとは、人間が話しかけたり質問したりすると、その音声を認識して対応するAI技術のことです。例えば、iPhoneのSiriやAmazonのスマートスピーカーのAlexaなどがこれに当たります。このAIアシスタントにおいてAIは、人間が何と言ったのかを把握する音声認識を行い、そのデータを解析してテキストに変換し、実行するというタスクを行います。
自動翻訳
Google翻訳やDeepLといった自動翻訳サービスを使用したことがある人も多いのではないでしょうか。ここにもAIの技術が用いられています。過去の膨大な翻訳のデータに基づいて、初めて見た文章に対してもこのように訳すのではないかと推論を行うという仕組みです。データから自動で特徴を抽出し学習するディープラーニングという技術が導入されているため、翻訳精度は上がりつづけています。
掃除ロボット
今や家庭の掃除において一般的になったルンバなどのお掃除ロボットですが、ここにもAIの技術が利用されています。お掃除ロボットはまず、部屋の中を動き回り部屋の間取りや家具の位置などをセンサーにより認識しマッピングします。その後は作成した地図に基づき床の掃除を行うという仕組みです。最新のお掃除ロボットはデータの収集と学習を絶えず行うため、性能は向上していきます。
顔認証
iPhoneのFaceIDやオフィスのセキュリティなど顔認証システムは身近に多く使われています。顔認証とは、カメラが捉えた人物の顔をデータと照合して認証を行うシステムのことです。この認証の精度を上げるために、AIが用いられています。
- AIにあらかじめ登録された顔と一致するかしないかを繰り返し判定させ、学習させる
- 学習したAIを活用して精度の高いプログラムを組み込む
という流れで認証精度を上げています。
広告における利用
ウェブサイトやYouTube、SNSなどを見ていたら自分の興味がある広告が表示されていた、といった経験をしたことがある人は多いと思います。このデジタルマーケティングにおける「広告配信の最適化」にもAIが活用されています。AIが、自社の商品やサービスに関心のある顧客を膨大なデータに基づいてターゲティング、将来的な購買や関心を予測し、広告配信を行います。AIの導入により、人的コストの低下、効率の向上に繋がっています。
ゲームにおける利用
ビデオゲームやアプリゲームにおいて対戦するコンピュータにもAI技術が用いられています。最も明らかな利用例はNPC(Non Player Character)という人が操作していないキャラクターの制御といえるでしょう。これはキャラクターAIと呼ばれ、自らゲーム内の環境を認識し、意思決定をすることで自律的に行動します。その他にも、プレイヤーの動きに応じて、ゲーム環境を調整するメタAIやゲームの地形や環境を考慮してプレイヤーなどに経路を示したりするナビゲーションAIも利用されています。
自動運転
近年、運転支援システムを搭載した自動車が一般的に販売されており、完全自動運転を目指した開発も進んでいます。さまざまな事態が起こりうる公道における運転にはAI技術が不可欠です。自動運転におけるAIの役割は大きく分けて認知・判断・操作の3つに分類されます。カメラやセンサーで周囲の障害物や標識の認知を行い、それを人工知能が判断し、その判断に基づいて実際の運転操作を行うという仕組みになっています。実際に公道を安全に運転するにはセンサーが捉えた物体が何であるか識別する画像認識の技術が重要なため、AIの深層学習を用いて、膨大なデータに基づいて特徴を学習する必要があります。しかしながら、いまだに技術的問題や倫理的問題があるため、完全な自動運転の実現はまだ先のことだといえるでしょう。
コロナ渦での活用
COVID-19の感染拡大により、ニュースなどで感染者数予測を目にする機会も増加しました。ここにもAI技術が用いられており、Google社が提供している COVID-19 Public Forecastsでは、膨大な疫学的データをAIが機械学習のアプローチにより分析することで感染者数や死亡者数を予測しています。
今後の展望
私たちの身近に用いられているAIの一例を紹介してきましたが、AIが生活をより便利にしていることが分かっていただけたかと思います。この先AIがさらに発展して、ますます私たちの生活と密接に結びついてくるでしょう。一部の技術者だけがAIを理解し、ただ使うだけの人が増えてしまわないよう、みんなが関心を持ちうまくAIを使いこなしていくことが大事になってくるといえます。