企業・サービス概要
Palo Altoに拠点を置くNautoは、既存の自動車にネットワークに接続したカメラデバイスを取り付け、運転の安全性を高めることにフォーカスするスタートアップ。2015年3月に設立。Nautoのプロダクトは、ドライバーの行動データを集めて運転の安全性を高める役割を果たす。
さらに同社のプラットフォームには、より大きな可能性を秘めた第2の役割がある。それはすなわち、自動運転車の開発に欠かせない巨大なデータセットを構築することである。600億キロを超えるデータポイントを分析することによって、ナウトのマシンラーニング(機械学習)アルゴリズムを進化させ、事故が起きる前に未然に防ぐ技術を研究・開発している。
このデータに価値を見出した多くの自動車系ファンドが同社に出資している。General Motor Ventures、Toyota AI Ventures、BMW iVenturesなどがその例だ。2017年6月には国内にNauto Japanが設立され、2018年8月より、上記のドライブレコーダー(Nauto)の販売事業を開始した。
特徴
同社は、AIがリアルタイムでわき見運転を運転手に警告するなど、安全運転指導の高度化、効率化に適したシンプルで使いやすい運行管理者向けウェブアプリを実装している。 また、AIがピンポイントで被疑箇所を抜粋することにより管理者の負荷を軽減していている。
さらに「自社のドライバーによるあおり運転に対する警告機能」「運転時の携帯電話(保持)と喫煙を検出する機能」「自動事故レポート作成機能」が追加された。このようにして多様な特徴を備えている中でもNautoの最大の特徴は、その導入コストの低さである。デバイス自体が安価なうえ、取り付けも簡単ですぐに導入できる。
投資理由
ソフトバンクがリード投資家を務めるシリーズBラウンドで1億5900万ドル(約180億円)を調達した。今回の資金調達により、Nautoはデータ収集のペースを格段に加速することができる。ソフトバンクの孫氏はプレスリリースにおいて「Nautoは自動運転車の業界にとって非常に価値のあるデータセットを生み出しています。それも、巨大なスケールで」と発言し、Nautoを絶賛した。
その背景には30年後に訪れるとされる“シンギュラリティ”があるといえる。シンギュラリティとは技術的特異点ともいわれ、人工知能(AI)が発達し、人間の知性を超えることによって、人間の生活に大きな変化が起こる概念のことである。孫氏はこのシンギュラリティを念頭に近年、テック企業の買収や投資を積極的に進めてきた。この投資もその一環だといえよう。
AIに関する特徴
・危険な運転の映像のみをAIが選択し、AIが検知した運転傾向をひと目で分かるレポートを作成する。
・同社のAIは、深層学習機能(ディープラーニング)を備えており、ドライバーの挙動に加えて車内外の状況や道路状況も検知できる。この高性能な人工知能により、様々な危険運転の検知が可能になっている。
・人工知能の利活用により、危険運転が検知された場所や走行速度、わき見していた時間までも把握できる。
・AIによる顔認証機能を備えており、事前予約不要でドライバーの認証を行うことができる。