2000年代に巻き起こった第三次人工知能(AI)ブームにより、AI業界は急速に成長した。IBMや富士通のような既存の大企業のみならず多くの新興企業がこの波にのろうと誕生した。特にAI研究においての権威、松尾豊教授を擁する東京大学からは多くのAI企業が生まれた。今回は現役東大生であるわたくしが注目の東大発AIスタートアップ企業を10社紹介していこうと思う。
1. Aidemy
同社の代表取締役石川 聡彦氏は東京大学院時代にクラスメイトの現東京大学エッジキャピタル(UTEC)代表取締役社長の郷治友孝氏から事業案のブラッシュアップ、投資を受け起業した。AI人材・組織を育成するオンライン学習サービス「Aidemy」を提供している。実際にコードを書きながら学ぶことができるため、効率的な学習を実現している。
2. ELYZA
東京大学・松尾研究室出身のエンジニアにより創業された自然言語処理(NLP)技術に強みを持ち、最先端のエンジンの開発やソリューション提供を行う企業である。中でも「ELYZA Brain」は、NLP技術領域における国内最大の日本語AIエンジンであり、「読む」「書く」「対話」を含む業務を高精度に支援する。また、リテールテック分野にも強みを持ち、ディープラーニングを活用した需要予測やダイナミックプライシングの研究・実装を行う。
3. NABLAS
AI総合研究所である同社は主にAI教育・人材育成プラットフォーム「iLect」、R&D、AIコンサルといった事業を展開している。特に「iLect」は、東京大学松尾研究室が開発したAI教育コンテンツであり、既に多くの企業で法人研修プログラムとして活用されている。
4. AI inside
AIによる光学式文字読み取り装置(OCR)サービス「DX Suite」を主力に、AIの運用を実現するためのエッジコンピュータ「AI inside Cube」も展開している。2020年12月には、デロイト・トーマツ・グループが発表したテクノロジー・メディア・テレコミュニケーション業界の収益に基づく成長率のランキング、「デロイト・トウシュ・トーマツ・リミテッド 2020年 日本テクノロジー Fast 50」において過去3決算期に基づく成長率469.5%を記録し、50社中5位を受賞した。さらに2020年12月をもって「DX Suite」が12,900件契約を突破するなど、OCR業界をリードしている。
5. ACES
東大松尾研究室発のAIスタートアップで、ディープラーニングを用いた画像認識技術を用いて産業のDX化を図ることをミッションとしている。主な事業として人の行動や感情を認識、物の検知などを実現する画像認識APIサービス「SHARON(シャロン)」と株式投資に必要な膨大な情報を、高速に分析し処理する投資分析のAIアルゴリズムサービス「CIRFIN(サーフィン)」を提供している。
6. TRUST SMITH
ロボティクス・医療・自動運転など様々な分野においてAIを活用したソリューションを提供する東大発AIベンチャーである。具体的には、自動車工場におけるティーチング不要のアームロボット制御AIアルゴリズムの提供、太陽光パネル亀裂検知AIの開発、人工知能を使った障害物回避型アームのアルゴリズム開発、ドローンの自動運転AI「HORNET AI」の開発、自動契約書作成システムの開発、国内の学会向けCRMシステム「Academy Cloud」の提供などを手掛ける。
7. DeepX
東京大学松尾研究室発のAIスタートアップで、「あらゆる機械を自動化し、世界の生産現場を革新する」という理念の元、AIを活用した機械自動化や現場作業自動化の支援をおこなう。ディープラーニングによる画像認識技術や強化学習技術に強みを持ち、課題の分析から設計、開発・導入までを一気通貫で行う。
8. Arithmer
高度数学を活用してOCRや静止画・動画、自然言語処理、3Dモデル自動生成、ロボットなどAIを活用したソリューションの開発を手掛ける東大発のベンチャー企業である。
9. TDAI Lab
東大鳥海研発のスタートアップで、世界最先端のAI研究活動を迅速かつ広範に提供し、人の持つ能力を飛躍的に高め、豊かな社会の実現に貢献することをミッションとしている。機械学習システム「WISE DOLPHIN」は、AIが膨大な文書を数秒で理解し、人間の質問に応じて該当箇所をハイライトすることが可能である。さらにほかのAIとは異なり、文章の意味まで理解する。
10. Light blue
ディープラーニングを用いた画像解析技術と自然言語処理技術に強みを持ち、AI導入プラットフォーム「Lightblue BASE」や教師データ作成システム「Zig-Zag AI SYSTEM」、人にフォーカスした画像解析で、建設現場、工場、倉庫などの現場向けに独自開発したAIエンジン「ヒューマンセンシングAI」、リアルタイムで音声を録音し文字起こしができるWeb会議向け議事録作成支援ツール「Texta」などを提供している。
まとめ
東大生といえば官公庁・大企業へ就職するイメージが強いのではないだろうか。しかし、学生のうちから起業する同大生が急増している。このような現状を鑑みると、さらなる東大発AIスタートアップが生まれてくるのは間違いないだろう。
【参考】
・【AI】 株式会社アイデミー 代表取締役 石川 聡彦氏 CEOインタビュー | Amateras Startup Review
・株式会社Lightblue Technology – INITIAL
・Finatextホールディングス / |STARTUP DB (startup-db.com)
・株式会社TDAI Lab – INITIAL
・Arithmer株式会社 – INITIAL
・TRUST SMITH株式会社 – INITIAL
・DeepX / B2B,AI,R&D|STARTUP DB (startup-db.com)
・AI inside | allai.jp
・NABLAS / HR,B2C,AI,学習,教育,B2B,SaaS,IT|STARTUP DB (startup-db.com)
・株式会社ELYZA、人間を超える国内最大の日本語AIエンジン「ELYZA Brain」を開発|株式会社ELYZAのプレスリリース (prtimes.jp)