企業のマーケティング活動の変革続く-AI活用最前線

マーケティングは企業にとって極めて重要な活動で、これまで様々な手法が生まれてきました。従来では、テレビや新聞、雑誌などを通じて、どれだけ多くの消費者に自社の商品を認知してもらうかといった、いわゆる「マスマーケティング」が主流でした。

その後Webの登場によって、マスマーケティングと比べると個々人のニーズを把握しやすい「Webマーケティング」が活発になりました。例えば、Webサイトの内容と親和性の高い広告を流すことで、サイトに訪れる人のニーズに合ったマーケティングが可能となりました。

そして近年、AIの発展によりマーケティングがさらに変化しつつあります。AIを活用することで、従来の「Webマーケティング」では把握しきれなかった顧客の正確な情報(名前や住所や購買履歴だけに留まらず、自社サイトの滞在時間やどのような経路で商品購入に至ったかといったことまで)を大量にデータ化し、その分析を活かしたマーケティングが可能となりつつあるのです。また、AIの活用によって従来は人間が行っていたマーケティング業務の自動化も進んでいます。

ここまでの概略だけでもマーケティングの世界が変わりつつあることが少し掴めたのではないでしょうか。今回はそんなマーケティングにおけるAIの事例を紹介します。

データドリブンなマーケティングとは

「AIを活用することでマーケティングがどのように変革していくのか?」

この問いに簡潔に答えると「データドリブンなマーケティングが可能になる」ということに尽きると思われます。

データドリブンとは、収集したデータの分析結果をもとに意思決定を行うことを意味します。マーケティングの文脈で考えれば、「なんとなくこの施策で良さそう」「以前もこの施策で成功したから」といった勘や経験に基づいた意思決定を行うのではなく、自社で得られるデータの検証を通してマーケティング施策を行うということです。

AIによってデータドリブンなマーケティングが可能となる背景には、冒頭でも述べたように、AIの発展によって企業が得られる膨大なデータの分析が可能となることが挙げられます。以下具体的な事例を見ていきましょう。

ターゲティング

データドリブンなマーケティング施策の代表例は広告のターゲティングです。

ターゲティングとは、「インターネット利用者が過去に閲覧したサイトや検索履歴、検索キーワードなどを基に利用者の嗜好性を解析し、これに的を絞った広告を配信する手法」のことです。


ターゲティング広告とは – コトバンク (kotobank.jp)

Webの登場から始まり、近年はYouTubeやTwitter、Facebook、Instagramといった様々な媒体が広く普及することで、インターネット広告市場の規模は今やテレビ広告市場の規模を超えるようになっています。その背景となっているのが、大量の人にリーチするテレビ広告に対してインターネット広告は限られた人に向けた配信が可能であるという性質です。

テレビと比較してYouTubeやInstagramなどの媒体はコンテンツが細分化されており、コンテンツが細分化されることで媒体に集まる人々も細分化されるため、ある一つのコンテンツに広告を表示することで限られた人に広告を届けることができます。そしてAIによって媒体に集まる人々のデータを分析しターゲティングを行えば、広告による販売促進効果をさらに高めることが可能となるのです。

例えば、InstagramやTwitterのユーザープロフィールをAIによって分析し、自社の商品との親和性が高いユーザーを絞り込んだうえで広告を表示すれば、購買率を格段に上昇させることができます。

また、AIによるビッグデータ解析技術が向上することで、ユーザーの属性だけでなく場面(例えば、電車に乗っているユーザーにのみ広告を表示する)を反映したターゲティングをすることも可能になるのではないかと考えられています。今後ますますAIを用いたターゲティングの技術が向上することで、「自分にとって利益のある広告しか流れてこない」という未来も実現可能となるかもしれせん。無関心な広告が大量に表示されることで生じるストレスから解放される日が待ち遠しいですね。

最適化

AIを活用したデータドリブンなマーケティングのその他の例は最適化です。

AIによって過去にサイトを訪れた人の行動履歴を分析することで、ユーザーが集まりやすいサイトや広告を作成する技術が実用化されています。例えば、従来はキーワード選定から膨大な時間を要していたSEO対策は今やAIが自動で行ってくれるようになりつつあります。

ちなみにSEO対策とは、Googleなどの検索エンジンで上位表示させるためにWebページを最適化することで、Search Engine Optimization(検索エンジン最適化)の略です。

また、AIが複数の動画素材の中から広告に最適な素材・箇所を抽出することで、より質の高い動画クリエイティブの制作をサポートするサービスも実用化されています。近い将来、AIが自動で質の高いクリエイティブを作る時代が来るのかもしれません。また、AIによって広告の視聴者のデータを分析することで、最適な広告予算の配分も可能になっています。今後もAIによってマーケティングの最適化が更に進むことが期待されます。

自動化

AIによるマーケティング業務の自動化も徐々に実用化が進んでいます。 先進的な試みとして、店内に設置したセンサーやカメラによって、来店客がどのような商品を手に取ったのかといった行動データや、滞在時間や外見から想定した性別・年齢などのデータを分析し、AIが自動で音声接客を行うサービスが既に実用化されています。完全無人店舗が実現する未来も近いのかもしれません。

まとめ

以上、マーケティングで用いられているAIについて紹介しました。

マーケティングにおけるAIの活用は全て「データドリブンなマーケティングの実現」という目的のもとで行われていることが見えてきたのではないでしょうか。

AIによるデータ解析技術が向上し、より精度の高いデータドリブンなマーケティングが可能になれば、企業にとっては投資対効果が高く、消費者にとっては自分にとって本当に必要な商品が手に入りやすいという、両者にとって利点のあるマーケティングが実現できます。

また、現在は主にAIがマーケターをアシストする形が主流ですが、将来的にはマーケターがAIをアシストするようになるのかもしれません。しかし、そういった未来が実現するとしても、顧客について深く考え需要と供給を結ぶマーケティングには人間の力は無くてはならないものになると思われます。人とAIが手を組んでより素晴らしいマーケティングが行われ、私たちの身の回りに素晴らしい商品が溢れる未来の実現も期待されます。

そして、企業において必須であるマーケティングは日本の経済の活性化にも必要不可欠であるため、今後もAI×マーケティングは注目の分野であり続けるでしょう。

allAi.jpではこちらに挙げたもの以外にも多くのマーケティングAIをまとめてありますので、ぜひご覧になってください。