マスコミ業界は終わらない -AIを活用したさらなる飛躍

YouTubeやTwitter、Instagramを活用し、一定の範囲内の人間にターゲットを絞ったSNSマーケティングの台頭によって、ラジオや新聞、そしてテレビといった不特定多数に情報発信を行うマスコミの意義は薄くなったように思われます。

事実として、マスコミの影響力が昔よりも小さくなったことは否めませんが、まだまだマスコミは終わっていません。それどころか今や、AIを活用し業界が抱える様々な問題を改善・解決しようとする動きもあります。この記事では、マスコミ業界が抱える課題から、マスコミがAIを導入した結果どのように問題が改善されたかについて記述します。ぜひご覧になってください。

マスコミ業界が抱える問題

マスコミ業界が抱える問題としてよく挙げられるのは、業務の過酷さや購読者/視聴者の減少などです。業務の過酷さについてよく言われていることは、新聞業界/テレビ業界どちらにおいても固定の勤務時間がなくプライベートと仕事との境がないということです。もし仮に事件などが発生した際には、朝刊や朝のニュースで速報を出すために深夜問わず働かなければなりません。このようにしてマスコミ業界は非常に業務が過酷であります。

一方、購読者/視聴者の減少に関しては、先述したように、近年では新聞離れやテレビ離れが進み、代わりにYouTubeやTwitter、InstagramなどをはじめとしたSNSが大きく普及しています。業務が過酷であるにもかかわらず、購読者/視聴者が少ないというのは割に合っていません。テレビ業界でよく言われていることとして、番組制作費が以前より少なくなったせいで、高給のTVタレントを使い続けるよりSNSで人気なインフルエンサーやYouTuberを使ったほうが費用対効果を得られるといったことです。

こうした課題を抱えているマスコミ業界ですが、AIを導入することによってどういったことが改善されるのでしょうか。AIを導入することによる影響について、それぞれを分けて次のパラグラフから説明します。 まず、AIを導入することによって業務の過酷さを改善するサービスについて紹介します。

AIを導入することの影響(業務の過酷さの改善)

AIによる記事要約・作成

近年では、記事の要約や作成を行ってくれるAIが開発されています。記事の要約に関して具体的な例を出すと、株式会社富士通研究所と株式会社毎日新聞社とが共同で記事を自動で要約するAIの開発に着手しており、実際に行った実証実験では、従来人の手で3~5分かかっていたものが瞬時に終わったという結果が出ています。

記事の作成に関して具体的な例を出すと、「Articoolo」というサービスが既に展開されており、概要としてはキーワードをいくつか入力するとそれに合った記事を作成しれくれる、といったものです。このように、従来では人の手によって、多大な労力と時間を要していた業務がAIの導入によって軽減されます。近い未来、新聞に載る記事はAIが作成したものになるでしょう。

AIによるアナウンサー代行

次に紹介するのはAIによるアナウンサー代行です。アナウンサーといえば、深夜に起床して朝の報道番組に備えて準備をする過酷な仕事といったイメージが大きいかと思います。また、地方のテレビ局では人材不足により十分なアナウンサーの確保ができていないというのが現状です。そこで、AIが人間に代わりアナウンサーの代行をすることで人間が行う業務の負担は相当軽減されるはずです。

だからと言って全てのアナウンサー業務がAIに代行されるわけではありません。速報などを報道する際には、人間の柔軟な対応力が必須です。その他にも、人間にしかできない感情の伝え方などAIには取って代わることのできない業務が多く存在します。重要なのは、AIと人間とが共存し、各々の業務の棲み分けを行うことです。

クレーム対応を代行するAI

また、人間の代わりにAIがクレーム対応してくれるといったサービスも展開されています。 AIは24時間365日休むことなく稼働することができるため、導入先のメリットとして

  • コールセンターにかけていた人件費を節約することができる
  • 昼夜問わずクレームに対応できる
  • クレーム対応による精神的負担を軽減することができる

等々他にも様々なメリットが挙げられます。

さらに、AI学習の結果、自動対話による的確な回答率が80%を超えており、多言語にも対応しています。クレームの対応による精神的負担は離職にも繋がりうる重要なことであるため、それをAIが代行してくれるのはありがたいですよね。

AIの音声認識技術がもたらす恩恵

最後に、音声認識技術を搭載したAIを紹介します。実際に展開しているサービスとしては、テレビ局の報道現場において、音声認識技術を搭載したAIが、アナウンサーの読み上げるニュースをテキスト化しモニターに表示するといったものです。このサービスにより、従来では、数人がかりでニュースの聞き取りをしてテキスト化するという作業を行っていたものが、1人で済むことになります。

さらに、その逆のサービスも展開されており、テキスト化された文字を音声へと変換するといったものです。これまで読み上げられ蓄積された膨大な音声データをAIに学習させ、合成音声として活用する方法です。このサービスは、既に紹介した「AIによるアナウンサー代行」にて用いられています。こうした取り組みによって、人材不足が叫ばれる今後において業務の効率化や負担軽減などの恩恵が期待されます。

AIを導入することの影響(購読者/視聴者の回復)

ここから先は、AIの導入によって購読者/視聴者を回復するサービスについて紹介します。

AIによる最速の情報収集

マスコミの強さは“公式性”であると考えます。SNSは非公式でありながらも、不特定多数の人間が情報を発信することによってその形を成しています。SNSは事象に対する情報発信が速いのが特徴的であり、数人が間違った情報を発信したとしても大多数が発信した情報によってかき消されます。一方、マスコミは公式な発表をするために間違った情報を発信することは許さず正しい情報を精査するのに時間を要します。

しかしながら現在、AIの導入によって情報収集をどこよりも速く行っており、正しい情報を報道機関に提供するサービスが展開されています。そのサービスでは、報道前の災害、事故情報をSNSから収集、検知し配信するというSaaS(Software as a Service)を提供しています。導入されているAIは自然言語処理、画像解析などの分野で活用されており、SNSで投稿されるテキストや画像を検知しリアルタイムで何が起こっているのかを予想します。そしてそのあと、報道機関に情報を発信することで迅速な報道を実現します。 従

来では数十人体制でSNSの監視を行い報道機関に報告するということを行っていたのに対し、このシステムを利用することで人員は数人で済みます。こうしたAIの導入によって情報収集から報道まで迅速かつ少人数で行えるようなサービスが展開しており、マスコミの利用者回復に貢献しています。

感情認識AIによる報道

次に紹介するのは、AIによる感情認識技術になります。一見、感情認識技術はマスコミ分野に有用性をもたらさないと思われますが、実際には感情認識によって多彩な報道をすることが可能になるというメリットを持っています。実際に、2018年シンガポールで行われた米朝首脳会談の際、感情認識技術を搭載したAIによって両首脳の発言の際に35%の恐怖を検知したという事実があります。このことから、両首脳が言葉上、話を肯定していても実際には躊躇している可能性がある、といったような推測ができます。

今後は、感情認識技術を応用して嘘を見抜くことができるメディアというものが開発される未来が来るかもしれません。そうなると面白いコンテンツとして視聴者の回復を望めるでしょう。

まとめ

以上、マスコミ・メディア分野で導入されているAIでした。これまで説明した通り、マスコミ業界は新たなメディアの台頭により危機を迎えています。

しかしながら、AIを導入することによって業務の効率化や利用者の引き込みなど、あらゆる恩恵がもたらされることが予想できます。まだマスコミ業界は終わっていません。AIの利活用によって1段階さらに飛躍するであろうマスコミ業界の動向に注目しましょう。