企業・サービス概要
Zumeは、Xbox Liveのゼネラルマネージャーやジンガのプレジデントを務めたAlex Gardenによって2015年6月に設立されたカリフォルニア州マウンテンビューに本社を置くロボット工学とAI(人工知能)を駆使する宅配ピザ事業会社。
同社の技術は自動運転ではなく、ロボット技術により調理過程を自動化するもので、配送中のトラック内で調理を可能にする特許を取得している。車内には超高効率なオーブンが搭載されている。本社工場では1時間あたり372枚のピザ製造能力を保有し、スマホのアプリから注文が入ると決済され製造ラインにオーダーが入る仕組みとなっている。ロボットには1台あたり2万から3万5000ドルのコストがかかっているが、オートメーション化により工程削減や人件費削減が可能となり高品質な食材を用いても一般的なピザよりコストを抑えることができる。
現在の宅配可能地域は本社があるマウンテンビューを中心に半径10km程度。マウンテンビューの人口が7万人程度、周辺のパロアルトなどを含めても人口は15万人程度と、営業圏は広くない。
特徴
ピザ製造にロボットを活用しキッチンを半自動化して時間と製造コストを大幅に短縮、デリバリートラックを活用し焼いて仕上げる分散型のピザデリバリーというシステムを用いている。基本的に食品運送トラック会社の配送中の食品の調理は法律により禁じられているが、同社は独自の搭載技術により合法的に営業することができる。
また、効率よくデリバリートラックにピザを積み込み適切な位置へ配置するためには高い精度で需要を予測することが求められるため同社では顧客データを蓄積して予測分析の向上をはかっており、特定の地域で最も人気の高いトッピングや特定の種類の注文に対する需要が急増する時間帯を割り出している。
さらに、同社は2020年までに10億個のプラスチック容器を、環境に配慮した植物由来の食品・飲料容器に置き換えたいと考え、フードデリバリービジネスからプラスチック容器をなくしてコムポスト化可能包装に置き換えるべくPivot Packaging社を買収したことに加え、南カリフォルニアに7万平方フィートの工場を立ち上げて、世界規模の食品企業向けに植物由来の容器の製造を目指す。
投資は失敗か
SoftBank Vision Fund(以下SVF)は、3億7500万ドル(約410億円)をZume社に投資したが2020年に入り、同社は従業員の80%を解雇しピザの製造・宅配事業から撤退した。今後は他の食品宅配業者にパッケージと効率化手段を提供する事業に転換する方針である。
AIに関する特徴
本社工場では1時間あたり372枚のピザ製造能力を保有し、スマホのアプリから注文が入ると決済され製造ラインにオーダーが入る仕組みとなっている。当初はスタッフがピザ生地を機械にセットする必要があったが2017年6月より生地回しロボット「Doughbot」が9秒で生地をピザの形に加工する。この「Doughbot」導入により従来比36秒の短縮と生地を延ばす際に生地が縮むのを防ぐ添加剤の削減を実現した。
2016年からフィアット製デリバリートラックを宅配に活用している。このデリバリートラックにはオーブンが56台設置されており12分以上かかる配達にはGPSで到着予想時刻を計算し、3分15秒前に遠隔操作でオーブンのスイッチが入り焼き始めるため利用者にできたてのピザを提供できるようになった。