不要な技術? プロンプトエンジニアリングの最新情報

目次

プロンプトエンジニアリングの概要

最近の研究と技術的進展

プロンプトエンジニアリングの実用例

今後の展望と課題

まとめ

1.プロンプトエンジニアリングとは

プロンプトエンジニアリングは、大規模言語モデル(LLMs)から最適な応答を引き出すために設計された入力(プロンプト)を調整する技術です。この手法により、モデルの再訓練や微調整を行うことなく、既存の知識を活用して性能を向上させることができます。プロンプトエンジニアリングの細かい知識は「Prompt Engineering Guide | Prompt Engineering Guide (promptingguide.ai)

で見ることができます。

一時期は「生成AIの性能が向上すればプロンプトの工夫なしで望む回答が得られる」と言われ不要説も出ていましたが、最新の研究でその有用性が確認されています。

 

2.最近の研究と技術的進展

英化学雑誌Natureに掲載された最近の研究では、プロンプトエンジニアリングがLLMsの性能を大幅に向上させることが示されています。いくつかの注目すべき研究と技術的進展について説明します。

 

OpenMedLM: 医療分野におけるプロンプトエンジニアリング

OpenMedLMは、医療分野でのプロンプトエンジニアリングの効果を示したプロジェクトです。この研究では、オープンソースのLLMsに対して、プロンプトエンジニアリングを適用することで、医療関連のベンチマーク(MedQA、MedMCQA、PubMedQA、MMLU medical-subset)で高い性能を達成しました​(s41598-024-64827-6)​。

 

具体的には、以下のプロンプト手法が使用されました:

 

Zero-shot prompting: 文脈や例示なしに直接質問を提示。

Few-shot prompting: 質問に対していくつかの例を提供し、その後に回答を提示。

Chain-of-Thought (CoT) prompting: 問題を段階的に解決する中間ステップを含むプロンプト。

Self-consistency prompting: 複数回の推論結果から最も一貫した回答を選択。

これらの手法を組み合わせることで、OpenMedLMは従来の微調整されたモデルを上回る性能を達成しました。

 

3.プロンプトエンジニアリングの実用例

プロンプトエンジニアリングは、医療分野だけでなく、他の多くの分野でも利用されています。例えば、ソフトウェアプログラミング、音楽生成、自然言語推論などが挙げられます。特に、MicrosoftのMedpromptは、一般的なLLMsに対してプロンプトエンジニアリングを適用し、医療関連のタスクでSOTA(State of the Art)性能を達成しました。

 

4.今後の展望と課題

プロンプトエンジニアリングの技術は急速に進化しており、今後も多くの分野での応用が期待されます。ただし、以下のような課題も存在します:

 

モデルのバイアス: プロンプトエンジニアリングは、モデルのバイアスを完全に除去することはできません。

複雑なタスクへの適用: より複雑なタスクに対するプロンプト設計が必要です。

リアルタイム応答: 実時間での応答性能の向上が求められます。

5.まとめ

プロンプトエンジニアリングは、LLMsの性能を最大限に引き出すための強力な手法であり、医療からエンターテイメントまで多岐にわたる分野での応用が進んでいます。今後の研究と技術開発により、さらに多くの課題が解決され、より広範な応用が期待されます。

 

参考文献

“OpenMedLM: Prompt engineering can out-perform fine-tuning in medical question-answering with open-source large language models”​

2407.12994 (arxiv.org)