生成されたデータを学習させるとAIモデルが崩壊する?!  ~モデル崩壊とは~

目次

導入

モデル崩壊とは

モデル崩壊の仕組み

モデル崩壊への対応策

まとめ

1.導入

今日AIは目覚ましい進化を遂げ、個人で学習させるデータを選び、用途に合わせて新しいAIをつくることも可能になっています。

AIモデルを学習させるには膨大な量のデータセットが必要になります。そこで「次世代AIモデルの学習にAIが生成したデータを使えば楽だろう。」という発想がでてきます。しかし、生成AIモデルが自身で生成したデータを再訓練に使用すると、「モデル崩壊」と呼ばれる現象が発生することがわかっています。本記事では、モデル崩壊とは何か、その仕組み、そして対策について解説します。

2.モデル崩壊とは

モデル崩壊とは、生成AIモデルが自身で生成したデータを使用して再訓練される際に、出力の品質が劣化し、元のデータ分布の重要な部分を失う現象です。これにより、モデルは現実のデータ分布を正確に学習できなくなり、生成されるデータが歪んだり、多様性が失われたりします。

以下はモデル崩壊の過程を図とグラフで示したものです。

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3.モデル崩壊の仕組み

モデル崩壊のメカニズムは以下の通りです。

3.1 再訓練による劣化

生成AIモデルが自己生成データを再訓練に使用すると、特に低確率のイベントに関する情報が失われやすくなります。これにより、元のデータ分布の重要な特徴を再現できなくなり、出力の品質が劣化します。

3.2 統計的誤差

統計的誤差は、サンプリングステップでの情報損失により発生します。これにより、データの尾部(低確率イベント)が次第に消失し、最終的には単一の状態に収束する可能性があります。

3.3 機能的近似誤差

ニューラルネットワークの表現力の限界により、モデルが元の分布を正確に再現できず、生成データに非現実的な確率を割り当ててしまうことがあります。このような誤差が累積すると、モデル崩壊が進行します。

3.4 学習プロセスの影響

学習プロセス自体にもバイアスや構造的な制約があり、これがモデル崩壊を助長することがあります。特に、世代を重ねるごとに誤差が累積し、モデルの出力が現実とかけ離れることがあります。

4.モデル崩壊への対応策

モデル崩壊を防ぐための対策として、以下の方法が考えられます。

4.1 データの品質管理

再訓練データセットにAI生成データが含まれないよう、データの品質を厳密に管理することが重要です。AI生成データを検出し、排除するためのツールを活用することが推奨されます。

4.2 ウォーターマーキング

生成されたコンテンツにウォーターマークを埋め込むことで、AI生成データの追跡と識別が容易になります。これにより、再訓練データセットに含まれるAI生成データを特定し、排除することができます。

4.3 訓練データの出所確認

再訓練に使用するデータの出所を確認し、信頼できるソースからのデータのみを使用することが重要です。これにより、データの品質と信頼性を確保できます。

5.まとめ

モデル崩壊は、生成AIモデルが自身で生成したデータを使用して再訓練される際に発生する深刻な問題です。モデルの出力が歪み、多様性が失われることで、実世界での適用に問題が生じます。モデル崩壊を防ぐためには、データの品質管理、ウォーターマーキング、訓練データの出所確認といった対策が重要です。これらの対策を講じることで、生成AIモデルの性能を維持し、信頼性の高い出力を確保することが可能となります。

参考文献

AI models collapse when trained on recursively generated data | Nature

2311.12202 (arxiv.org)