MedTech 進む医療現場の変革 AI活用最前線

医療ではミスが起こると人命の危険や致命的な個人情報流出に関わるということもあり、ITによる大きな変革は起こっておらず、昔ながらのアナログ的手法がとられているため最後の聖域とさえ言われます。
事実、医療のデジタル化の代表的なものである電子カルテですが、2020年現在でも普及率は48%程度です。

しかし、現在、各産業界におけるITによる業務改善効果には目を見張るものがあり、いよいよ医療にもDX(デジタルトランスフォーメーション)の波が押し寄せてきています。最近ではオンライン診療という言葉が大きなトレンドとなりましたが、その他にもDXの中心となるであろう人工知能(AI)も徐々に医療分野に利用されてきています。今回は医療におけるAIの事例を紹介します。

 

■画像診断AI

医療で最も活用されているAIが画像診断AIです。医療ではレントゲン、CT、MRI、内視鏡など多くの画像検査が行われます。医師は画像診断を行う際には、正常な画像と病変画像の違いを認識することで、病気を診断していますが、この診断のサポートをAIが行うことによって医師の負担を軽くしようということです。
2020年1月、学術誌Natureで次のような記事が掲載されました。英Imperial College LondonとGoogle Healthらの研究グループが構築したAIにより25856人の乳がんの画像診断を行ったところ、AIは単独医師に比べ、誤ってがんと特定したものを5.7%、がんの見落としを9.4%改善しました。
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1799-6

通常、医師は画像診断といっても、画像以外の血液検査など数多くのパラメータを考慮に入れたうえで、総合的に診断するので、一概には比較できませんが、一定条件において画像診断AIは医師と同等の働きができるということが言えるのでしょう。
ここでは乳がんの画像診断の例を挙げましたが、臓器の自動抽出や、肺結節CT画像、心臓MRI画像、消化器における内視鏡画像等でAIによる画像診断支援が利用されています。

 

■問診AI

医師、特に内科医は、患者さんへの問診と各種検査データによって数多の病気をどんどんと絞り込んでいき、最終的に病名を特定していきます。そして、その病行に対し、薬を処方します。これらの過程をAIが行うことによって医師のサポートを行うというものが問診AIです。
病名を付けるのはあくまでも医師ですが、英Babylon HealthはAIチャットボットが患者さんを問診し、健康状態を評価します。患者さんは自身に合った薬を購入し服薬することで、一時的に様子を見ます。これは、限られた数の医師が、症状の重い患者さんを優先的に診ることができる

 

出典:Babylon Health  https://www.babylonhealth.com/product

 

以上、医療分野で用いられているAIについて紹介しましたが、医療AIの分野は大手プラットフォーマーも参入し、大きく進歩しているところです。国や宗教や文化に関わらず「健康」というものは人類共通の課題ですから、今後も注目の分野であり続けることでしょう。

allAi.jpではこちらに挙げたもの以外にも多くの医療AIをまとめてありますので、ぜひご覧になってください。