COVID-19×AI

はじめに

2019年に新型コロナウイルスが発生して以来、感染は拡大し続け、現在終もなお、息の目処はたっていません。感染者数の予測や、飛沫のシミュレーションなどにおいて「AIの予測によると」というフレーズを聞く機会も増えました。また、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、私たちの生活は大きく変わりましたが、そこにも様々なAI技術が登場しました。 

そこで、この記事ではCOVID-19×AIというテーマで、新型コロナウイルスに関連するAI技術を紹介していきたいと思います。 

AIによる新型コロナウイルスの予測 

飛沫シミュレーション

COVID-19は、感染者の鼻や口から放出される感染性ウイルスを含む粒子に、感受性者が曝露されることで感染します。 

人は、咳、くしゃみ、会話、呼吸などの際に、鼻や口からさまざまな大きさや性状をもった粒子を空中に放出します。粒子はその大きさや含まれる液体の量によって空中での振る舞いが異なります。 

そこで、ウイルスの飛沫拡散を予測するために、スーパーコンピューターを用いた計算シミュレーション技術の開発が進みました。 

理化学研究所と神戸大学が中心となり、シミュレーション技術の一部である自動車エンジン内の熱流動予測技術を急遽活用し、室内空間における感染リスク評価をデジタルトランスフォーメーションし、スーパーコンピューター「富岳」に実装しました。「富岳」でのシミュレーションにより、50程度のさまざまな感染シーンと1,000を超える多種多様な感染条件に対して、社会が求める的確なタイミングで、感染状況に応じた感染リスクの評価とその対策についての提案がなされました

感染者数予測AI

新型コロナウイルス感染者数が毎日のように報道され、「来月には第〇波が来るでしょう」などと予測されますが、これにもAI技術が用いられています。 

大阪の産業科学研究所産業科学AIセンターの教授である桜井保志センター長は、時系列の非線形の微分方程式に基づいたアルゴリズムである「リアルタイムAI技術」の研究を新型コロナの感染者数予測に応用しています。これによって、各国の感染者数や死亡者数などから重要な特徴や潜在的傾向を抽出し、未来の感染者数を予測します。リアルタイムAI技術では、新規感染者数などの更新データを入力すれば、即時に予測モデルもアップデートします。それにより、緊急事態宣言といった施策やウイルスの変異など状況の変化に即時に対応することが可能となっています。 

コロナウイルス患者のAI問診

新型コロナウイルスの感染拡大により、全国の医療機関では患者の受け入れが難しくなる医療ひっ迫が度々起こっています。そんな状況下で、事前AI問診サービス「AI受診相談ユビー新型コロナウイルス版」の提供が開始されました。 

このベースとなっているシステムは「AI問診ユビー」という、診察前の事前問診をタブレット端末で行えるサービスです。約5万件の論文から抽出したデータを使って、患者の年齢や症状に合わせた質問を自動で生成・分析し、患者のスクリーニングを行うことができます。 

従来だと、患者は医療機関の受付後に紙の問診票を記入し、診療室でも医師が同様の質問を繰り返し電子カルテに入力していました。ユビーではタブレットでの事前問診の際に、AIが質問を自動生成し、結果が医療専門用語に翻訳されて医師のもとに届くため、問診時間が大幅に短縮されます。 

COVID-19に関連する症状が含まれている場合は、医療スタッフにアラートを送ることができる機能が搭載されています。事前に患者の優先度や診察場所を決定できるので、院内感染を防ぐための導線を整備したり、患者の状態に応じた案内をしたりすることができるようになりました

AIの創薬への利用

新型コロナウイルスの感染拡大は未だに収束の目処が立っていません。ワクチンとともに、コロナ収束の鍵になると考えられているのが治療薬です。各国の製薬会社や研究機関がこぞって開発と審査を急いでいます。しかしながら、創薬には膨大な時間と費用が掛かります。トロント大学の最近の報告によると、新薬が製品として市販されるまでのコストは平均26億ドルとされています。

そこで注目されているのが、AIを用いた新薬の開発です。新薬の開発には通常、疾患に作用する低分子化合物を見つけ出すために、研究者が何度も実験を繰り返します。AIを用いることで、膨大なデータが利用できることから、開発にかかる時間の大幅な短縮や優れた性質を持つ分子の設計が可能になると考えられています。

また、AIが備えているディープラーニングの活用によって、これまでの有効な薬の属性を学習し、新たな薬を推論することが可能になります。製薬の研究員が何年もかけて行うような研究・開発を、AIならわずかな期間で行えると期待されています

まとめ

 ここまで新型コロナウイルス感染拡大に伴うAI技術の利用についてまとめてきました。これからこのコロナ禍を乗り切るためにさらにAI活用は進んでいくと予想されます。また、コロナの終息した「afterコロナ」でもその重要性が増すことは確実といえるでしょう。