現在、米国に代わる経済大国として中国がその地位を確立しつつありますが、重要な争点はAIの研究と応用です。AIの研究と応用で先行する国が技術の将来を決定し、経済的競争力を大きく高める一方で、後手に回る国は重要産業で競争力を失うリスクがあります。AIは蒸気機関、電気、コンピュータなどと同じくGPT(GUID Partition Table)と呼ばれる、汎用技術としてありとあらゆる産業に幅広く応用することができます。こうした汎用技術の覇権を握ることこそが今後の国力を左右することになります。
欧米の情報機関の評価によると、世界第2位の経済大国である中国は、10~20年以内にAI、合成生物学、遺伝学など多くの主要新興技術を支配すると予想されており、実際に中国は2035年までにAI、ロボット、6G、その他すべての技術を支配するために1.8兆ドル相当の5カ年計画を発表しています。
中国のAI開発がこれほどまでに進歩している理由は二つあります。一つ目は、中国がAIの倫理に関する膨大な議論を度外視していることです。二つ目は、アメリカの多くの企業が政府に非協力的であるのに対して、中国では政府の権限があまりにも強く、多くの企業が政府に協力せざるを得ない状況にあることです。
また注目すべきは、米国が中国を牽制して経済成長を止めようとしており、それに対し中国は米国の依存から脱却しようとしている点です。例えば、米国がファーウェイの5Gネットワークの米国内での運用を禁止し、中国のハイテク企業にソフトウェアや部品を供給する米国企業の事実上の禁輸措置を設けることで、中国のデジタル大国としての台頭を抑制しようとしています。これに対して、中国の習近平国家主席は、マイクロチップ製造などの分野で技術的な自給自足を確立し、米国への依存から脱却するよう働きかけています。
現在、中国は米国の倍近くのスーパーコンピュータを性能ランキングのトップ500にランクインさせています。さらに、データ生成の面でも中国の優位は保たれると思われます。中国は着実に成長した結果、AI開発の先陣を切ることになりました。規則や規制、プライバシーに対する国民の意識、企業と政府の強力な連携などが、同国のAI進展に貢献しているのです。