Brain Corp

AIで清掃業界を変革する―孫氏が出資するテクノロジー企業

皆さんが通勤・通学している勤務先や学校、そしてスーパーマーケットは綺麗に保たれていますでしょうか。もちろん全てに当てはまるわけではないですが、多くの場合学校やオフィス、そしてスーパーマーケットが綺麗に保たれているのは清掃業者の方のおかげだといえます。しかしながら近年、清掃業者の人員不足問題が顕著になっています。

そのような状況下、AIを活用することによって人員不足問題を解決しようとする企業が存在します。今回紹介するのがまさにその企業で、Brain Corpというアメリカの会社です。2017年にはソフトバンク・ビジョン・ファンドから一億ドルもの資金を調達することに成功しています。Brain Corpとはどのような企業なのか、そしてなぜ孫氏が出資しようと思ったのかについて紹介します。是非ご覧になってください。

そもそもどういった企業なのか

そもそもBrain Corpとはどういった企業なのかについて、簡潔に説明します。

Brain Corp

◇2009年に設立されたカリフォルニアに本拠地を置くスタートアップ
◇民生機器を自立駆動させるクラウドベースのAIプラットフォームを設計開発する
◇2017年7月にソフトバンク・ビジョン・ファンドから1億ドルを調達
◇2017年11月にソフトバンクロボティクスと提携。同社が業務用清掃ロボット事業に参入しRS26 Powered by Brain OSの2018年日本国内発売を発表
◇2018年11月にソフトバンクロボティクスがBrain Corpのソフトウェアを搭載した床清掃ロボット「Whiz」を発表

以上が、Brain Corpに関する簡潔な説明でした。次にBrain Corpが提供しているサービスがどういったものなのか具体的に見てみましょう。

Brain Corpのイロハ

設立当初のストーリー


まず初めに、Brain Corpがどのようにして設立されたのかについて紹介します。
Brain Corpは、2009年アメリカのカリフォルニアにてEugene IzhikevichAllen Gruberによって設立されましたが、Eugene Izhikevichは元々学者で、Allen Gruberは起業家でした。創業当初は半導体メーカーのクアルコムや新技術の開発を行う米国防総省の機関、国防高等研究計画局の研究開発を請け負っていました。

そして2014年になると自動走行式のロボットに必要な機械学習、AIの開発に着手し始め、1年後の2015年には「Brain OS」を発表しました。
Brain CorpはBrain OSを発表後、最低5年は業務用清掃機器で勝負しようと思っていましたが、2017年のソフトバンク・ビジョン・ファンドの出資を受けて研究開発が加速し、配達ロボット用のソフトウェアなど新たな分野へ展開することに成功しました。

サービス内容

Brain Corpが開発した“BrainOS”は、ロボットを自律走行させるためのソフトウェアです。最先端のAIシステムを活用することで、複雑な環境を自在に自律走行することが可能となります。搭載されているAIは、ロボット本体下部に装備されているソナーやレーザーセンサーを活用して周囲の状況を把握することができます。移動中の障害物をはじめ動いている人間なども把握することができ、その都度AIが自己判断を下して対処することができます。

多くは、自動走行の清掃用機器を自律操作するために用いられますが、自動走行の配達ロボット用のソフトウェアとしても導入されています。清掃用ロボットに留まらず、配達用にまで対応することのできるソフトウェアこそがBrain Corpの独自性であり強みでもあります。

競合他社との比較

業務用清掃機器を開発している企業は多く、競合他社は数百万台という数のロボットを製造しています。一方で、Brain Corpはロボットを生産するのではなく、ロボットに搭載するソフトウェアを開発しています。AIを搭載したソフトウェアを開発することで、ソフトバンクロボティクスのほか、ニルフィスクやテナントカンパニーなどの業界大手と提携し清掃業界に参入しているのです。

そして次に、実際に開発された製品について紹介します。

RS26 Powered by BrainOS

RS26 Powered by BrainOSは、2017年にソフトバンクと提携して開発した清掃用自動走行ロボットです。初期設定として、清掃エリアを手動運転することによってAIが地図を作成し清掃ルートを記憶します。記憶した後は、スタートボタンを押すだけで、構築した地図データをもとに複数のセンサーが周囲を認識して人や障害物を避けながら清掃ルートを自律走行することができます。

Whiz

Whizは、「Pepper」に続くソフトバンクのロボット第2弾と位置づける製品です。最大の特徴は、最初に手押しで清掃エリアを一回りするだけで地図データを作成でき、特別な技能なしに清掃エリアの学習をさせられる点です。さらに、自動走行時には、障害物や出現した人をセンサーとAIが検知し、止まったり迂回したりしながら清掃を行うことができます。また、数センチ単位という壁際まで清掃することができ、日本の物件に合うよう既存モデルよりボディが小型化されています。

創業者が語ったこと

創業者のEugene Izhikevichが以下のようなことを語りました。

「ロボットが家庭や仕事で活躍する未来-そんな未来は確実にやってきます。家の中でも庭でも、農業でもいろんなことをしてくれます。そんな未来のロボットが実はすでに存在するとしたら驚くでしょう。しかし、私たちはこれらを“ロボット”とは言いません。なぜなら人が操作をしているからです。もしもそれが自律移動するとしたらどうでしょうか?私たちが作るのは頭脳の部分です。メーカーの皆さんとパートナーシップを組み、メーカーの皆様が機械を作る。その中にどうやって脳を入れるかを私たちが考えています。そしてそれをAIのサービスとして提供しています。このサービスを導入することで、機械を自律走行ロボットに変えることができるのです。今後はテクノロジーの価格を下げて、消費者向けのロボットにも力を入れていきたいと思います。」

以上からして、Brain Corpはロボットの脳を作っていることがはっきりとわかっていただけたはずです。創業者がいうように、消費者向けのロボットが低価格で提供される日も近いかもしれません。

最後に、ソフトバンクの孫正義氏が出資した理由について紹介します。

孫正義氏がBrain Corpに出資する理由

孫正義氏がBrain Corpに出資している最大の理由は、「AIを活用して社会課題を解決するソリューションを提供している企業である」からと考えます。

現代において、清掃会社が抱える最大の課題はやはり労働力の確保です。清掃業の顧客となるオフィスビルや小売店はコスト管理の問題に直面しており、安全で低コストの自動走行式スクラバーを作ろうと大手メーカーが着手しようとするも、屋内自動運転システムを表現できるリソースはありませんでした。そういった状況下で、AIを活用して自動走行ロボットを可能とするソフトウェアを開発したBrain Corpはまさに清掃業界の救世主とも言えます。

驚くべき点は、そのAIの高い精度です。Brain Corpが開発したAIを搭載した清掃機械は様々な環境下でも柔軟に対応することができ一台が学習したことを全体で共有し進化し続けるのです。例えば多くの大型スーパーでは、人が操作する清掃機械を導入していますが、これらの機械を操作する人たちの人件費だけで数百万円ほど掛かっています。しかし、これらの機械にBrain Corpのソフトウェアを埋め込むことで、人件費が不要になり圧倒的なコスト削減に繋がります。これは一見すると人の仕事を奪うという見え方にもなりますが、そうではありません。人間を単純作業から解放し、人間がもっと人間らしい仕事に就くことができるのです。

こうしたAIを上手く活用することによって人員不足という社会課題を解決するソリューションを提供するだけでなく、人がもっと人らしい仕事に就くことができるようにするサービスを提供するBrain Corpを評価し、出資したのではないのでしょうか。

以上、Brain Corpに関する記事でした。
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