Biofourmis

AIが病気を事前に予測―孫氏が出資するHealthTech企業

医療サービスの中で多くの人が意識していないこととして、「薬を処方された後に、経過の報告をすることがない」ということが挙げられます。体に何らかの異変が起き、病院で診察を受け、そして薬を処方してもらう、この流れが普通であり、回復後の経過については報告する必要がありません。しかしながら、薬がどのくらい効いたか、そういったデータをもっと集めることによってより効率的な医療サービスを行えるのではないでしょうか。

今回は、AIを活用して患者のデータを蓄積し効率的かつ画期的な医療サービスを提供しているBiofourmisという企業について紹介します。
是非ご覧になってください。

そもそもどういった企業なのか

そもそもBiofourmisとはどういった企業なのかについて、簡潔に説明します。

Biofourmis

◇2015年にシンガポールで設立されたヘルステックスタートアップ
◇AIと機械学習をベースにしたソリューションを活用し、個々人に沿った疾患予測を行っている。また、患者の退院後にはそれぞれに合わせたケアと薬の処方を提供している。
◇「ウェアラブルバイオセンサー」と「AIを活用した健康解析プラットフォーム」を提供
◇2020年7月、中外製薬と共同で技術開発に着手
◇2020年9月、ソフトバンクビジョンファンド2を筆頭に1億ドルを調達
◇同年、米国のボストンに拠点を移す
◇総額1億4500万ドルを調達
◇2020年には経営をBiofourmis Therapeuticsと Biofourmis Healthの2本立てに変更

以上が、Biofourmisに関する簡潔な説明でした。次にBiofourmisが提供しているサービスがどういったものなのかをはじめとしてBiofourmisについて詳しく見てみましょう。

Biofourmisのイロハ

Biofourmisが提供しているデジタル医療プラットフォームはいくつもの階層から成り立っており、AIを活用して退院前後の患者のデータを蓄積・解析することによって治療方法に役立てています。また、あらゆる疾患がある中でも、同社は特定の治療にフォーカスしていており、その中でも特に心臓病患者を中心にサービス提供を行っています。

独自プラットフォーム“Biovitals”

Biovitalsプラットフォームは、様々な医学的領域に対応することのできる、効果的なプラグアンドプレイソリューションです。Biofourmisは、主に心血管疾患と悪性腫瘍に焦点を当てており、主力製品であるBiovitalsHFは、心不全患者向けに設計されました。開発された背景としては、「正当なガイドラインに基づく治療を受けられている患者が20%未満であること、そのうち、最適な治療薬を選択されているのは心不全患者の1%未満のみであること」、などがありました。

BiovitalsHFは、事前に心不全を予測する機能を備えており、適切なタイミングで適切な用量の薬を投薬することが可能となります。仕組みとしては、バイオセンサーを付けた患者に対してAIを活用した“Biovitals Analyticsプラットフォーム”を活用し、日々のデータを蓄積・解析する中で心不全の初期兆候を検出することができるというものです。このサービスによって、生活の質向上を含めた患者中心の医療をもたらすだけでなく、通院数の減少に伴う医療経済の効率化、および医療の質的向上に伴う死亡率の低下にも繋がります。

心不全の予測

これまでに、400万人超もの心疾患患者の関するデータを蓄積・解析してきたことによって、従来の標準医療用ウェアラブル端末を使用して心不全を14日前に99%の精度で予測することが可能となりました。その結果、突然の心不全で亡くなる患者や再入院する患者の数を減少させることができ、医療費の削減も併せて可能となりました。

ボストンへの拠点移行

2020年、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2から調達した資金で、拠点をボストンに移し商業展開を図りました。CEOのSingh Rajput氏は、「アメリカは重要な臨床能力を持つデータサイエンティストを探す主要マーケットです。臨床データを蓄積すること、そしてなにより顧客に近いところにいることは極めて重要であるため拠点を移すことに決めました」と語りました。

米国に拠点を移すことは心疾患に関するサービスを展開するためだけでなく、他の治療に関するサービスの準備をするためでもあります。

中外製薬との共同技術開発

2020年7月、Biofourmisは中外製薬と「デジタル技術によって子宮内膜症に伴う痛みの評価方法の確立を目指す」という旨の発表をしました。実際に、米Empatica社が開発するウェアラブル端末「E4」と、Biofourmisが開発するAIプラットフォーム「Biovitals」を活用し、痛みの定量化のためのデータ解析や症状のモニタリングを実施します。

また、確立した評価方法を検証するため、Biofourmisと中外製薬とは120人以上の子宮内膜症患者を対象に米国とシンガポールで観察試験を実施します。

2つの経営方針

ソフトバンク・ビジョン・ファンド2を主導として1億ドルもの資金を調達したのち、Biofourmisは経営方針を2つに分けて進めることを発表しました。以下2つについて説明します。

Biofourmis Therapeutics

臨床的に検証されたソフトウェアをベースとした治療法を開発し、いまだに治療法が見つかっていない疾患に対する医療ニーズにある患者の治療と管理を行うことで、新しいカテゴリーの医療を開拓することに焦点を当てています。これらのデジタル治療法は、独立して、または薬物療法と併用して使用することで、薬剤の有効性を高め、コストを削減し、患者の転帰を改善することができます。

Biofourmis Therapeuticsの「beyond the pill」モデルでは、製薬会社が同社のデジタル治療薬ソリューションを高価値医薬品との併用療法として処方することで、有効性を高め、複雑な慢性疾患を持つ患者の管理と治療を改善します。

Biofourmis Health

急性期から急性期後のケアに移行する患者を遠隔で管理するバーチャルケアモデルに注力します。同社のAIベースのBiovitals®プラットフォームは、心不全、冠動脈疾患、呼吸器疾患、がん患者、特に化学療法/放射線療法やCAR-T治療を受けている患者を管理するための個別化されたケアパスウェイと重ね合わされています。

Biofourmis Health「在宅病院」イニシアチブは、同社のAIを利用した遠隔モニタリングを活用して、入院期間の短縮、再入院、救急部門の受診回数の削減など、医療費の削減を実現し、臨床医が患者を遠隔モニタリングできるようにすることで、患者が転帰できるように改善し、医療危機が発生する最大21時間前までに介入するようにします。

孫正義氏がBiofourmisに出資する理由

孫正義氏がBiofourmisに出資している最大の理由は、「AIを活用して人々を健康にするためのサービスを提供している企業である」からと考えます。現在、Biofourmisは心疾患患者を中心にAIを活用することで心不全の予測を可能としています。疾患を持った患者が突然発作に襲われる前に、最適な量の薬が処方され突然発作が未然に防がれることが最も理想でありそこに必要不可欠なのがまさにAIなのです。

さらに、Biofourmisが評価されるべき点として、急激な変化に対して柔軟な対応ができるということにあります。それまで心血管疾患や呼吸器疾患、がん患者を対象に事業展開していたBiofourmisですが、コロナウィルスが発生した2020年2月になるとすぐに、COVID-19の患者を遠隔モニタリングするための新たなプログラムを開発し、香港やシンガポールなど、各国政府の対応を支援しました。

このようにして、AIを活用しさらに時代に沿ったソリューションを提供するBiofourmisに孫正義氏は魅力を感じ取ったのではないでしょうか。

以上、Biofourmisに関する記事でした。
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