AIの導入プロセスには、
1. 企画・構想フェーズ
2. PoCフェーズ
3. 実装フェーズ
4. 運用フェーズ
という4つの段階があります。本記事では、各段階の具体的な中身を説明します。
*AIについて詳しく知りたい方は、↓の参考記事をご参照ください。
1. 企画・構想フェーズ
(1) 課題設定
当たり前のことですが、AIの導入は目的ではなく、あくまで問題解決の手段です。そのため、AIの活用について検討する前に、まずは解決すべき課題を設定する必要があります。
次に、リストアップした課題がAIによって解決可能かを検証します。その際、従来の安価な自動化ツールよりもAIの方が本当に効果的なのかということも併せて検討する必要があります。
こうした検証を経てAIの必要性を確認できたら、次に技術的な実現可能性を検討します。この検討においては、開発のための人材や学習データを十分に確保できるのか、という点がポイントになります。
(2) ROI検証
(1)の検証において、設定した課題がAIによって解決可能であり、AIの必要性が認められ、技術的に実現可能であると判断した場合は、次に、充分な ROI(Return On Investment:投資に対するリターン)が得られるかを検証します。こうした検証を経てから開発へ移行します。
2. PoC(Proof of Concept:試作開発の前段階における検証)フェーズ
(1) データアセスメント
まずは十分な量と質を備えた学習データを用意する必要がありますが、それには多くの人手やコストを要するのが通常です。
例えば、破損したデータや不正確なデータ、無関係なデータなどが混入している場合は、使えるデータにするための前処理であるデータクレンジングが必要となります。
また、特に教師あり学習*を実施する場合は、学習データに注釈をつけるアノテーション*という作業が必要となり、追加のコストが発生します。
*教師あり学習について詳しく知りたい方は、↓の参考記事をご参照ください。
なお、学習データが不足している場合は、シンセティックデータ(合成データ)*の活用も視野に入れるとよいでしょう。
*シンセティックデータ(合成データ)について詳しく知りたい方は、↓の参考記事をご参照ください。
(2) モックアップモデル構築
次に、ベータ版となるモックアップモデルを構築します。PDCAサイクルを回し、モデルの精度向上を図るために、モデルの評価指標を設定することも忘れてはいけません。代表的な評価指標としては、RMSE(Root Mean Squared Error:平均二乗偏差)や MAE(Mean Absolute Error:平均絶対誤差)、MAPE(Mean Absolute Percentage Error:平均絶対誤差率)などが挙げられます。
(3) 検証項目評価
構築したモックアップモデルの評価を実施したら、モデルのパラメータを調整し、評価指標が改善するように修正を図ります。
こうした業務は必ずしも順番通りに行うわけではなく、状況に応じて各フローを行ったり来たりすることもあります。
3. 実装フェーズ
PoCフェーズでモデルの実現性が確認できたら、そのモデルをベースにして最終的な開発を行います。ここからは通常のシステム開発と同様、要件定義とAIモデルの最終化を行い、設計・開発へと移行します。そして最後にテストを行い、想定通りに稼働するかを確認します。
4. 運用フェーズ
導入したAIをうまく活用するためには、KPIモニタリングが重要です。
具体的には、以下の3つを設定するとよいでしょう。
1. ビジネス成果のKPI(ex. 売上や顧客が増えたか)
2. AIモデルの精度のKPI(ex. 売上予測や不良品検知を正しく行えているか)
3. システム運用のKPI(ex. 稼働の安定性はどの程度か)
そして、これらのKPIの達成具合をみてモデルのチューニングを行い、さらなる品質向上に繋げることが大切です。