監視から防止へ! 防犯&セキュリティーにおけるAI活用最前線

現在、AIによって防犯の有り様が大きく変わろうとしています。

これまで防犯カメラで大量の映像データを蓄積しても、それをリアルタイムで人によって監視することは困難であり、万引きなどの事故や犯罪が起こった後に防犯カメラの映像データを調べるといった、いわば事後的な活用しかされてきませんでした。しかし、ディープラーニングを用いたAIによる画像解析技術の向上によって、映像データをリアルタイムで監視し、犯罪や事故の兆候を事前に検出することが可能になりました。

その結果、防犯カメラを予兆検知や未然防止のために活用できるようになってきているのです。今回は実用化が進んでいる防犯&セキュリティーにおけるAI活用の事例を紹介します。

万引き防止

2010年10月14日、警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省と、民間31団体が参加した「万引防止官民合同会議」によると、全国的に見た万引きによる被害額は4,615億円(1日あたり12.6億円)と推定されています。また、店舗あたり年間の不明ロス金額の平均は、年間総売上の0.42%にも上ります。なんと、小売店にとっては売り上げを伸ばすこと同じくらい、ロス率を減らすことが利益アップにつながるという悲しい状況なのです。

そんな中、AIを搭載した防犯カメラによって万引きを未然に防ごうとする取り組みが行われています。例えば、万引きの挙動をAIに学習させることで、監視カメラの映像データから万引きの兆候を自動検知するシステムや、そうした万引きの兆候をAIが感知すると、店内のスタッフのスマートフォンに通知し、スタッフが不審なお客様に声をかけるところまでサポートするシステムが実用化されています。

AIによる画像解析技術を防犯カメラに応用し、店内の顧客の正確な状況をリアルタイムで把握できるようになったことで、今後は万引き防止にとどまらず、マーケティング活動にも応用していこうという取り組みも始まっており、AIを搭載した防犯カメラは今後更なる活躍が期待されます。

侵入検知

従来、侵入検知のために用いられていたセンサー技術は、対象となるエリアに動く物体を検知した際に通知や警告が鳴るという仕組みで、動く物体が何であるのかまでは判断できないものでした。しかし、AIによる画像認識の技術が向上することで、人や動物などの特定の対象のみを検知することが可能になってきています。

例えば、農業分野では農作物を荒らす動物のみを検知し、その他の動物や人間は検知しないといったサービスが実用化されています。また、AIが人の顔を認識しデータベースと照合することで、自動的に入室可否を判定することができるサービスも実用化されています。

事故防止

駅やショッピングモールなどの公共の施設での事故防止にもAIを用いた監視カメラが導入されています。駅では、酔っ払いやホームの黄色い線の内側への長時間の滞在などの危険行為をAIが自動で検知し、警告することで事故の防止を目指すシステムが既に実用化されています。

また、ドライブレコーダーにもAIを搭載することで、危険運転の兆候を事前に検知し警告することで交通事故を防ぐ取り組みも進んでいます。このようにAIによって駅や道路など公共の場における私たちの生活がますます安全なものになっていくことが期待されます。

その他犯罪防止

また犯罪防止においてもAIの活用が進んでいます。例えば、子供の通学時の安否を保護者に知らせるGPSにもAIを搭載したものが登場し始めています。具体的な機能としては、AIが子供の頻繁に訪れる場所を学習し、学習した場所への出入りを自動で検知し保護者に通知するといったもの、子供の帰宅時間を過去のデータから予測するものなどがあります。

また、デジタル犯罪の防止にもAIが活用されています。SNSやWebサイト、メールなど様々なメディアでの投稿を収集し、AIによって自動的に誹謗中傷や情報漏洩の検知が可能になり、ゲームやアプリでのチートなどの不正行為をAIによって自動で検知することも可能となっています。今後デジタル化が進む中で、ますます増加が懸念されるデジタル犯罪の防止に向けてAIの活用は今後も進んでいくと思われます。

まとめ

以上、防犯・セキュリティー分野で用いられているAIについて紹介しました。AIによる画像解析技術の向上によって、監視をして犯罪が起こった後にデータを調べるという従来の対策から、犯罪の予兆をリアルタイムで感知し犯罪を未然に防ぐ対策へ移行が可能となりつつあります。また、事故防止の観点から見てもAIによる恩恵は計り知れないものとなる可能性があることも理解できたのではないでしょうか。

さらには、今後更なる増加が予想されるデジタル犯罪の防止にもAIが活用できることから、現実空間とデジタル空間の両方において事故や犯罪を防止し、渡下氏の社会生活がますます安全なものになっていくことが期待されます。そうした社会の実現を目指す防犯&セキュリティー×AIの分野は今後も目が離せない分野であり続けるでしょう。