AIは今や一部の先進企業だけでなく、あらゆる業界・業種で活用される存在となっています。特にGoogle CloudのAIソリューションは、多くの企業が業務プロセスを改善し、新たな価値を生み出すために活用されています。この記事では、具体的な企業の事例を取り上げ、それぞれがどのようにAIを活用し、どのような成果を上げたのかを詳しく見ていきます。
AI活用の主要領域と企業事例
1.カスタマーサービスの進化
LLMをはじめとしたAIの導入事例の中でも、カスタマーサービスの自動化は比較的初期の段階から活用されてきました。特に、問い合わせやトラブルシューティングなどの顧客対応の効率化に大きく貢献しています。例えば、アメリカの家電量販店Best Buyでは、Geminiを活用したバーチャルアシスタントが導入され、製品のトラブルシューティングや配送スケジュールの管理、Geek Squad サブスクリプションの管理などを自動化しました。
また、フランスの大手小売企業Carrefourの台湾の子会社Carrefour Taiwan ではAIソムリエが導入され、顧客の嗜好に基づいたワインのレコメンデーションを提供しています。この技術により、オンラインとオフラインのショッピング体験が統合され、売上の向上につながっています。
さらに、アルゼンチンのEコマース企業Mercado Libreは、Vertex AIの埋め込み(Embedding)技術を活用し、より精度の高いセマンティック検索(意味検索)を導入しました。文脈や意味を捉えて検索ができるセマンティック検索は、従来のキーワード検索よりも高い精度で回答できる点が魅力です。これにより、2 億人以上の顧客に対して、適切な製品のレコメンデーションが可能になりました。
2.従業員の生産性向上
AI は顧客対応だけでなく、企業内部の業務効率化にも貢献しています。アメリカの金融サービス会社Citiでは、Vertex AIを活用した開発者ツールキットやドキュメント処理などにおける業務全般にAIの導入を進めており、開発者の生産性向上と業務のデジタル化を実現しています。
一方、インドの保険会社HDFC ERGOでは、インド市場向けに「スーパーアプリ」を開発しました。スーパーアプリではAIを活用することで、顧客対応プロセスを最適化しています。例えば、保険請求のデータ分析や保険契約の管理などにおいて、効率的なサービスを提供しています。
ソフトウェア開発の現場でもAIの導入が進んでいます。例えば、アメリカの大手Eコマース企業Wayfairでは、コード補完を支援するCode Assistを導入し、開発環境のセットアップ時間を55%短縮しました。また、個々のパーツの機能をテストするユニットテストにおける成功率も48%向上し、開発者の作業効率が大幅に向上しました。
3.データ分析による意思決定の支援
膨大なデータをAIで分析することで、企業の意思決定を支援する事例も増えてきています。アメリカの医療機関Mayo Clinic では、Vertex AI Search を活用し、50 ペタバイトに及ぶ医療データを瞬時に検索可能にしました。これにより、研究者が必要な情報を迅速に取得できるようになり、医学研究のスピードが向上しました。また、最近ではAIを用いた心電図が開発され、約30%多くの異常を検出することができたとされています。これにより、患者の早期治療が可能となっています。
また、アメリカの金融サービス会社MSCI では、BigQueryを活用して100万の資産データの気候リスク分析を強化しました。この取り組みは、投資家が気候リスクを理解し、適切な対策を講じるための支援を目的としています。これにより、より精度の高いリスク管理が可能になり、投資判断の質が向上しています。
4.サイバーセキュリティの強化
AIを活用した脅威検出とその対応の迅速化も進んでいます。スペインの金融機関BBVAでは Google SecOpsを導入し、リアルタイムに脅威を監視、分析することで、脅威検出時間を従来の数分から数秒に短縮しました。これにより、セキュリティインシデントへの対応が迅速化され、より強固なセキュリティ体制が整っています。
アメリカの製薬会社Pfizerでも、AIを活用してサイバーセキュリティデータを統合しています。これにより、分析時間が数日から数秒に短縮され、セキュリティ対応の効率が大幅に向上しました。
5.クリエイティブ領域での AI 活用
マーケティングやコンテンツ制作においてもAIが活用されています。例えば、アメリカの製造会社Procter & Gambleでは、Googleの画像生成AIである「Imagen」を活用してリアリティのあるマーケティング画像を自動生成し、クリエイティブチームの生産性を向上させました。
また、日本のゲームソフト開発・販売会社Square Enixでは、AIを活用したパーソナライズマーケティングを導入し、プレイヤーの嗜好に応じたメール配信を行っています。その結果、メール開封率が20%向上し、サービスの定着率も10%向上しました。
AI活用の次なるステップへ
この記事では、カスタマーサービス、生産性の向上、データ分析、セキュリティ対策、クリエイティブ領域などといった、業界を横断する共通分野におけるAIの活用事例をご紹介しました。Google CloudのAIソリューションを活用することで、企業は業務の効率化や顧客体験の向上を実現しています。
AI活用が多くの業界の様々な職種に浸透していく中で、次に求められるのは業界特化型のAIソリューションなのではないでしょうか。金融、製造、医療、物流、食品など、各業界が抱える課題や業務フローに合わせたAIの導入が、さらなる業務の効率化や企業の競争力強化につながると考えられます。今後は、汎用的なAIツールの活用を超えて、業界特有のニーズに適応したAIの開発と実装が大きな鍵となりそうです。
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【参考文献】
321 real-world gen AI use cases from the world’s leading organizations