SearchGPT: AI検索エンジンはGoogleを超えるか?

2024年7月25日、Open AIは新たな革新としてAI検索エンジン「SearchGPT」を発表しました。従来のGoogle検索が採用する「キーワード検索」とは一線を画し、「文脈検索」によりユーザーの複雑な質問に対してもまるで人間と対話しているかのように的確な回答を提供します。まるで自分専用の知識豊富なアシスタントを手に入れたかのような検索体験が、SearchGPTによって実現されるのです。(注:7月29日現在、発表されてはいるものの、実際の使用はまだ開始されていません)

この記事では、SearchGPTの魅力とその将来性について、従来の検索エンジンとの違いも含めて、詳しく見ていきましょう。


目次

  1. 次世代検索エンジンSearchGPTの驚くべき能力
  2. ChatGPTに新機能!?-AI検索の可能性-
  3. Google検索: 利便性の裏側
  4. AI Overviewsの進化: Google検索の新しい形
  5. ユーザー志向のAI検索: 自然な対話と広告非依存
  6. SearchGPTの競合: Perplexity AIとの比較
  7. まとめ

次世代検索エンジンSearchGPTの驚くべき能力

SearchGPTは、Google検索に対抗した大規模言語モデル(LLM)であるChatGPTとウェブの情報を組み合わせた新しいタイプの検索エンジンです。これにより、ユーザーは明確でリアルタイムな情報を簡単に検索することができます。

1.文脈理解とリアルタイム情報提供
従来の検索システムの課題
  • キーワード依存: 従来の検索システム(例えばGoogle)は、キーワード検索を用いていました。ユーザーは適切なキーワードを考え、最適な結果を見つけるために複数のリンクをクリックして情報を探す必要がありました。
  • 時間がかかる: このプロセスでは時間がかかり、特に複雑な質問に対しては満足のいく答えを見つけるのに苦労することがよくあります。
SearchGPTのアプローチ
  • 文脈理解: SearchGPTは「今週末、Half Moon Bayでウミウシが見られるのはいつ?」というような人と対話をしているような複雑な質問にも対応できます。
  • リアルタイム情報、ソースの提示: AIがウェブ上から必要な情報を収集し、根拠となるリンクを明記して提示することで、ユーザーは正確な情報を迅速に得ることができます。
2.対話型検索とChat Bot形式
対話型検索の利点
  • 自然な対話形式: SearchGPTのリアルタイムの対話型検索機能により、まるで人と対話しているかのような感覚で情報を引き出せるのが大きな魅力です。
  • 詳細な情報取得: Googleとは異なり、Chat Bot形式での対話を通じて、質問に対する理解を深めることができます。これにより、ユーザーはより詳細な情報を求めたり、関連する追加の質問をしたりすることが容易になります。

ChatGPTに新機能!?―AI検索の可能性―

SearchGPTには、業界最高水準のChatGPTという最高性能のLLMを用いた回答の生成ができるという魅力があります。他のAI検索エンジン(例えばPerplexityなど)もLLMを用いていますが、ChatGPTはその中でも特に高性能です。

  • 高性能なLLMの利用: ChatGPTを用いることで、より効率的で正確な答えが得られます。
  • 将来の統合: SearchGPTは、公開次第ChatGPTに統合される予定です。これにより、現在のClaudeやGeminiにはない新機能が加わり、生成AIとAI検索の相乗効果が期待されます。

[出典:SearchGPT Prototype; https://openai.com/index/searchgpt-prototype/]


Google検索: 利便性の裏側

Google検索は、検索業界で圧倒的なシェアを誇ります。StatCounterによると、2024年6月における検索エンジン市場において、Googleは91.06%という高いシェアを獲得しており、ほとんどの人が利用しているツールであることがわかります。Google検索は、インターネット全体から膨大な量の情報を収集し、キーワード検索を基に結果を表示する仕組みです。ユーザーは適切なキーワードを入力することで、関連する情報を入手することができます。

〈Google検索のメリット〉

まず、Googleはインターネット上に存在する膨大な情報を持っており、その豊富なデータベースによって多様な検索結果を提供しています。また、高度な検索機能もGoogle検索の特徴のひとつです。Googleの自社サービスであるGoogle MapやGmailなどと連携することで、統合された検索体験を提供しています。例えば、「近くのレストラン」と検索すると、単にリストを表示するだけでなく、レビューや地図情報も同時に表示されるため、ユーザーはより広範囲にわたる情報を得ることができます。

〈Google検索のデメリット〉

こうした利便性の裏にもGoogle検索のデメリットがあります。そのひとつが広告の多さです。Google検索は広告主体の検索エンジンのため、ユーザーが求める情報が見つけにくいことがあります。例えば、「効果的なダイエット法」と検索すると、ユーザーの求めるダイエット方法ではなく、ヨガやジムなどの広告が上位の検索結果に表示されることがあります。また、キーワード検索にかかる労力もデメリットのひとつでしょう。ユーザーは適切なキーワードを入力する必要があり、複雑な質問に対する検索キーワードの選択に苦労する場合があります。また、納得のいく結果を得るためには検索結果からいくつものWebサイトをクリックし、その情報をひとつひとつ探していく必要があります。

このような従来のGoogle検索のデメリットを解消するために、Googleは「AI Overviews」という新機能を発表しました。これは、AI検索と同様の大規模言語モデル(LLM)を活用したシステムで、従来のキーワード検索を超える検索体験を提供します。


AI Overviewsの進化: Google検索の新しい形

1.文脈理解
  • 従来のキーワード検索だけでなく、文章による検索が可能になりました。これにより、複雑な質問に対する回答を得やすくなります。
  • 従来のシステムでは、検索結果からサイトをクリックする必要がありましたが、AI検索と同様に大規模言語モデルがデータ情報から要約してほしい情報をまとめて提示してくれる点が魅力です。そして、その根拠となるWebサイトのリンクも提示してくれるため、ソースがわかりやすく、信頼性が増します。
2.強力なデータベース
  • 他のAI検索と違いGoogleの豊富なデータベースにより、複雑な質問でも正確で信頼性の高い検索結果を提供します。
3.マルチモーダル検索
  • ユーザーはキーワードだけでなく、動画や画像からも検索できます
4.チャットボット形式ではない
  • 他社のAI検索エンジンのように、チャットボット形式での対話による深い情報探索はできません
5.広告収入の維持
  • Googleは依然として従来の検索エンジンを通じた広告収入に大きく依存しています。AI検索が普及すると、ユーザーがサイトをクリックする回数が減少し、広告収入が減ることが予想されます。
  • GoogleはAI Overviewsにも広告を組み込み、広告収入の維持を図っています。

ユーザー志向のAI検索: 自然な対話と広告非依存

AI検索は、大規模言語モデル(LLM)を用いた新しいタイプの検索エンジンです。AI検索では、AIが文脈を理解し、ユーザーの質問に対して自然な対話形式で回答を提供します。これにより、ユーザーは複雑な質問にも的確な回答を得ることができます。以下に従来のAI検索の主なメリットとデメリットを挙げます。

〈メリット〉
1.文脈理解と対話型検索
  • 自然な対話形式:AIは質問の文脈を理解し、人と話しているように自然な言語での質問にも対応可能です。
  • 要約機能: 検索結果をLLMで要約して表示し、ソースも明記してくれます。
  • チャットボット形式: より知りたい場合は、チャット形式で詳細な情報を深掘りすることができます。
2.広告非依存
  • 広告に依存せず、ユーザーにとって最も適切な情報を提供します。
  • 例: 「子供のための最高の教育アプリは何ですか?」という質問に対し、広告ではなく専門家のレビューに基づいた回答が得られます。
〈デメリット〉
1.情報の正確性と信頼性

AIが提供する情報の信頼性には課題があり、時折誤った情報が含まれる可能性があります。

2.プライバシーの懸念
  • 個人情報の収集: ユーザーの検索履歴や個人情報を収集する可能性があり、プライバシーの問題が懸念されます。
  • 著作権問題: 新聞や記事の内容を基に情報を生成する際、盗作などの著作権侵害の問題が発生する可能性があります。

SearchGPTの競合: Perplexity AIとの比較

Perplexity AI

Perplexity AIは2022年12月に公開された、自然言語処理(NLP)と機械学習に基づく対話型検索エンジンです。この革新的なエンジンは、ユーザーが任意に選択できるAI(GPT-4oやClaudeなど)を活用して、ウェブ上から必要な情報を収集し、まるで人間のように自然な言語で回答します。(7月31日現在、SearchGPTは一般公開されていないため、Perplexity AIが有力です。)

  • マルチモーダル入力: PDFや動画などのマルチモーダルな入力が可能で、テキスト以外の形式の情報も簡単に検索できます。
  • 出典元の明記:提供される情報の信頼性を確認できるように、出典元が明記されています。
  • リアルタイム情報提供:インターネット検索を通じて最新の情報をリアルタイムで取得する能力も、Perplexity AIの大きな魅力の一つです。

現在の検索システムの特徴をまとめると以下の表のようになります。


まとめ

この記事で紹介したSearchGPTの特徴をまとめます。

  • キーワード検索に代わるAI検索
  • 広告非依存のユーザー向け検索
  • 対話形式で複雑な回答や深掘りができる
  • 著作権侵害や正確性の問題がある
  • Claudeなどに負けない生成AI×ChatGPTの新機能の統合

従来の検索エンジンとは異なる検索体験を提供してくれるAI検索ですが、その利便性に頼るだけではなく、きちんと情報の精査や著作権の確認などを怠らないことが重要です。


参考文献

  1. https://openai.com/index/searchgpt-prototype/
  2. https://blog.google/products/search/generative-ai-google-search-may-2024/
  3. https://www.perplexity.ai/
  4. https://gs.statcounter.com/search-engine-market-share