シンボルグラウンディング問題とは

定義

シンボルグラウンディング問題とは、『AIが、提示された”記号”を実世界における”意味”として認識できるかどうか』を論じる問題のことを指します。

この問題は、1990年に認知科学者であるStevan Harnad氏による論文『Stevan Harnad, 1999, The Symbol Grounding Problem』の中で定義されています。

この定義の中で挙げられている記号とは、言葉のみに留まらず物質そのものを指すなど、包括的な意味合いを持ちます。

上記の定義だけでシンボルグラウンディングを理解することは難しいと思いますので、以下で具体的な事例を挙げながら説明します。

*AIについて詳しく知りたい方は、↓の参考記事をご参照ください。

具体例

事例1:りんご

例えば『りんご』という言葉、すなわち記号をAIに提示したとしても、AIはその言葉からりんごのイメージを思い浮かべることができません。人間であれば『りんご』という言葉から「色が赤い、形が丸い、硬い、フルーツ、甘い」 といった様々な要素を思い浮かべることができ、それらを無意識のうちに掛け合わせてりんごのイメージを作り上げることができます。これに対してAIの場合は、『りんご』という言葉とそれに対応するりんごのイメージがあらかじめ設定されていない限り、そうした想起はできないのです。

事例2:シマウマ

事例1と同様、『シマウマ』という言葉を人間に提示した場合、人間はその言葉からシマウマのイメージを思い浮かべることができますが、AIはそれができません。人間は「縞模様がある、動物の馬である」といったシマウマの条件を無意識のうちに思い浮かべて掛け合わせることができますが、AIは、特別な設定をしない限り、そうした処理ができないからです。また、AIの場合は、仮に馬と縞模様の概念を持っていたとしても、「シマウマ=縞模様のある馬」という記述がされていない限り、両者を掛け合わせることができないのです。

将来の展望

上記のように、人間であれば今までの経験を基に記号を実世界の意味に結び付けることができますが、AIは記号を記号としか処理することができません。

しかし近年では、ディープラーニングの登場により、AIは自ら学習し特徴量を抽出することが可能となったため、この問題は解消されつつあると言われています。

例えば、事例2において、ディープラーニングを搭載したAIは「シマウマには、通常の馬と異なり、縞模様が入っている」という特徴量を自ら抽出することによって、「縞模様の入った馬がシマウマである」と認識できるようになります。

これまで、シンボルグラウンディング問題の解決には人間のような身体性が必要であると考えられてきました。しかし、ディープラーニングによってこの問題の一部が解決しつつあります。AIが人間と同等の想像力を持つ日も遠くないのかもしれません。

*ディープラーニングについて詳しく知りたい方は、↓の参考記事をご参照ください。