製品やサービスについて、ホームページや説明書だけではわからない時についつい電話をかけてしまいますよね。その電話対応を行っているのがコールセンターです。
しかしながら現在、コールセンターでは「人材不足」と「応対品質のばらつき」が問題となっています。
人材不足に関して言うと、コールセンターで働く非正規雇用社員やパートの年間離職率は約4割とかなり高くなっています。どうしてこんなにも離職率が高くなっているのでしょうか。コールセンターでの離職率が高い原因としては、顧客からのクレーム対応によるストレスが主なものです。やはり、いくら仕事であっても顧客からのクレームに対応し続けることは精神的に負担が大きいに違いありません。
次に、応対品質のばらつきに関して言うと、一般的に新人オペレーターの研修には3~5か月程度の期間が必要であるにも関わらず、人材不足の問題から十分な研修を受けていない新人オペレーターが対応することで応対品質にばらつきが出てしまうのです。
こういった問題は負のスパイラルです。人材不足の影響で新人オペレーターが対応せざるを得ず、その結果応対品質にばらつきが生じてクレームが増える。そしてクレームが多いほど離職率が高くなり、ますます人材不足になってしまう、といったものです。
では、コールセンターにおけるこの問題を解決するにはどうすればいいのでしょうか。最近、AIをコールセンターに導入することでこれらの問題を解決しようとしている企業がいくつか見られます。どのようなサービスを行っているのかについて具体的に見てみましょう。
人材不足を改善するサービス
AIチャットボットによる対応の自動化
コールセンターが重労働になっている原因としては、人が直接全ての問い合わせに対して応答していることが挙げられます。こういった重労働問題だけでなく、人材不足問題を解消しうるシステムがAIチャットボットです。
AIチャットボットとは、顧客の質問(文面)に対して蓄積された膨大なデータをもとにAIが自動で返答するといったものになります。24時間365日休みなく稼働してくれるAIを導入することで、顧客の問い合わせに対して迅速に対応でき、かつ人が行う業務の負担を軽減することができます。自身の問い合わせたい内容がAIチャットボットで完結することができれば電話をかけずに済むといったものです。FAQシステム(後述)とは異なり、自分の質問内容に合わせた回答をAIがしてくれるためあらゆるケースに対応することができます。これはまさに人材不足を改善するサービスです。
応対品質のばらつきを改善するサービス
AI搭載型のFAQシステム
次に、AI搭載型のFAQツールについて紹介します。
従来、コールセンターでは紙ベースのマニュアルを開き、顧客からの質問を確認していたのですが、AI搭載のFAQツールを導入することで、自動的に質問内容のキーワードから最適と思われるマニュアルをAIが提示してくれます。このように、AIを利活用することで全てのマニュアルを覚えずとも一般の業務を滞りなく行えるようになります。
その結果、新人オペレーターであってもAI搭載型FAQシステムを活用することで電話対応ができるようになるため、応対品質にばらつきが出ることもありません。 対応時間の短縮にもなり、業務の効率化につながります。
音声認識システム
もう一つ、応対品質のばらつきを改善するサービスとして、音声認識システムがあります。音声認識システムでは、音声認識技術を持ったAIが顧客とオペレーターとの会話をテキスト化しFAQツールと組み合わせます。このシステムによって、経験の浅い新人オペレーターでも経験豊富なベテランオペレーターのように迅速に対応できるようになります。結果として、応対品質のばらつきがなく、均一で高品質な対応となります。
さらに、顧客の声のトーンから顧客満足度の自動測定を行うことも可能とします。
人材不足、応対品質のばらつき双方を改善するサービス
AIを加えたIVRシステムによる担当者の振り分け
まず、聞きなじみのないIVRシステムから説明します。
IVR(Interactive Voice Response )とは、顧客からの電話による問い合わせに対して、音声案内によって自動的に応答を行うシステムのことです。電話がつながると、あらかじめ録音されている音声ガイダンスが再生され、顧客(発信者)はその音声ガイダンスに従い、自身の携帯電話の数字ボタンを押す、といったものになります。
通常のIVRシステムとは異なり、AIを加えたIVRシステムでは、顧客の発話内容をAIが判断し、適切なオペレーターに接続してくれます。従来のIVRシステムとは異なり、発話者が操作することなくAIが自動判断してくれるため、ボタンの押し間違いによる担当者のミスマッチ等も生じません。
AIが加えられているIVRシステムの普及によって、顧客が問い合わせしたい内容に合わせてAIが適切な担当者への振り分けを行うことで、対応時間の削減をはじめとする有人業務の負担軽減、そして顧客満足度の向上に繋がります。まさに、コールセンターが抱えている人材不足と応対品質のばらつきを改善するサービスとなっています。
さらに、このIVRシステムとSMS(ショートメッセージサービス)を連携させることにより、電話の問い合わせをFAQページやチャット応答に切り替えるシステムも近年では注目されています。
以上、コールセンター分野に導入されているAIの紹介でした。この記事では、まずコールセンターが人材不足と応対品質のばらつきといった重大な問題を抱えていることを紹介し、そのあとにそれぞれを改善するサービスを紹介しました。このように、コールセンターとAIの親和性は非常に高く、今後さらなる導入が期待されます。
近い未来、コールセンターにおける有人の業務が全てAIに取って代わる未来が来るかもしれません。